「あ」

プロンテラの精算広場にて、見知った姿を目にし、ヴァレリーは小さく声を零した。
広場の一角に居たのは、黄金色の髪に緋色の瞳のハイプリースト。最近よく狩りに行くようになった友人である。
にこにこと人好きする笑みを浮かべ、話しかけている先は、大人しそうな顔立ちのウィザードだった。どうやら、仲が良い、という訳ではないらしく、困ったように眉を下げていた彼女は、軽く頭を下げ、逃げるように去っていく。
そんな女性に、オーアは苦笑を浮かべると、軽く手を振って、それを見送っていた。そうして、1つ息を吐くオーアの元へと、ヴァレリーは足を踏み出した。

「オーア」

不意に、背後からかけられた声に、ぱっと振り返る。そこにいたのは、自分のものよりも淡い金色の髪に、深緑の瞳のギロチンクロスだった。

「あ、ヴァレリーじゃん。こん~」

狩り場が同じだったことが切欠で、ちょくちょく一緒に狩りをするようになった友人へと笑って声を上げれば、ヴァレリーも挨拶を返してから、小首を傾げた。

「今の子って、オーアの友達?」
「うんにゃ。ちょっと気になったから声かけてみたんだけど、振られちゃった感じだなー」

へらりと笑ってそう言えば、ヴァレリーはちょっと意外そうに目を丸くしてから、にやりと笑う。

「へーえ。あんな感じの子が好みなんだ?」
「好みというか……気になった、が正しいかなー」
「それは、意味一緒じゃねーの?」
「そかー?」

ヴァレリーの言葉に首を傾げる。暗い顔をしていたり、疲れてそうだったり、そういう元気のない女の子に声をかけ、息抜きの手伝いがしたいだけなんだけどなぁ、と呟いてから、あぁでも、自分がやりたくて声をかけているのだから、確かに好んでしている訳で? なら、ヴァレリーの言ってる事もあながち間違いではないのかもしれない。

「や。それなら、気になったで正しいから」

オーアの内心を見抜いたかのようなタイミングで、そう突っ込まれ、オーアはぱちりと目を瞬かせた。そんなオーアに、ヴァレリーは笑う。

「分かりやすいねぇ、オーアくんは」

面白がるように軽い調子でそう言ってから、んでもって、お人よしだと紡ぐヴァレリーに、オーアは首を傾げる。

「そうかぁ?」
「そうだって。ま、やってる事、どっからどう見てもナンパだけどな」

そういえば、それを言われた事は以前にもあるのだろう。オーアは苦笑する。

「まぁ、それは結構散々言われてるから分かってるし、まー、目的が違うだけで、実際してる事はほぼ同じだからなー。ナンパって言っても間違ってはないと思うよ」

俺はほぼほぼお茶だけど、話聞いて、買い物とか狩りに付き合う事もあるし。そうすると、確かにナンパと変わりないと笑う。そんなオーアに、何を思ったのか、ヴァレリーは、ナンパねぇ、と呟いて、その顔をじっと見つめた。

「? どした、ヴァレリー?」

不思議そうに、ヴァレリーを見返したオーアに、にんまりと、ヴァレリーは、深緑の瞳を細め、笑った。

「俺は、あんたでもアリだよ。ナンパのお相手」
「へっ?」

オーアくん、可愛い顔してるし、と意味深に笑い、囁いた金髪のギロチンクロスに、オーアは驚いたように、目をまん丸にした後、けらけらと笑いだした。

「あっはははははっっ!! ありがとーな」

ただの軽口と思われたらしい。
笑い声を上げ、じゃあ、今度また狩りに行こう、と楽し気に笑ったオーアに、ヴァレリーも笑い返して、狩場の候補を提示した。

「……半分くらいは、本気だったんだけどなー?」

そんな言葉を小さくこぼして。

fin

あとがき
グーグルドキュメントに置いてた奴をサルベージ。
オーアさぁ、オーアの認識だとナンパでする事って健全なデートみたいなものだから、あの台詞なんだよなー。そも、ワンナイト的なのは、欠片も意識にないっていう。
あと、ヴァレリーさんも、半分くらいは本気、って事は、まだ半分は冗談ってことなんだよねぇ。もしも、オーアがそういう方面でもノリが良かったら、そういうのも吝かではない。……んだけど、他に関係ある方々とおんなじ感情なんだろーなぁ、と。
つまり、口ではそう言ってても、まだ、本当の本気ではない時期なんだろうなー、と考察してる中の人だったり。


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使用素材: Atelier Little Eden様 Heart Jewelry

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