むわり、と潮気を含んだ熱気が身体を包む。
目に映るのは白い石畳に白い壁。少し視線を上げれば、いくつもの赤い部屋と、ミッドガルド大陸では見る事のない、ポートマラヤ特有のものだろう濃い緑の植物が見えた。
懐かしくない訳ではないが、良い思い出のない景色に、自然とレンは重い溜息をつき、頭の上にあるストライプ帽子を深く被り直す。
今のレンは若草色の髪を出来るだけ帽子の中に押し込み、眼鏡をかけて、きちんと、商人の制服を身に纏っている。この姿であれば、瞳さえ見られなければ、ここの住民に自分の事がバレる事はないだろうと思う。なんせ、住民の記憶の中の悪魔の子、つまり自分は小汚いボロをまとった浮浪児だろうと思われるからだ。とはいえ、頭で分かっていても、身体の反応はすぐには変えられない。緊張に身体を硬くし、狩場などよりも余程気を尖らせるレンに気付き、オーアは苦笑を浮かべると、ぽん、とその小さな背を叩いた。

「大丈夫だって」

オーアの手がレンに触れた瞬間、びくっと小柄な身体が跳ねた事には敢えて気付かなかったふりをして、そう笑って見せたオーアに、レンはちらりと視線を向けた後、ふいっと、そっぽを向いた。

「別に。分かってるよ、そんな事っ」

態度と口調こそ可愛げのないものだが、大丈夫だと分かっている、という言葉は、この場にいる者を信用しているからこそ出てくるものだ。故に、微笑ましさを感じつつも、エドアルトは口を開いた。

「さて……とりあえず、まずは宿かな。街で情報収集するにしても、集合できるところと一息つけるところは必要だろう」
「そうね。この中で日帰りで事が終わると思ってる人はいないわけだし……ついでに情報収集しながら、って感じかしら」

エドアルトの言葉に、リーベは頷いてそう言えば、皆、異論はないようだった。
と、緩慢に周囲を見回しているオーアに気付き、リーベは小首を傾げる。

「オーアちゃん? どうかした?」
「ん? あぁ、いや、何でもない。……不謹慎だけど、初めて見るとこだからちょっと物珍しくってな」

へらり、と笑い頭を掻くオーアに、ふーん、と相槌を打って、リーベは柚葉へと視線を向ける。それを受け、にこり、と微笑んだ柚葉に、リーベは1つ息を落とした。

「……まぁいいわ。行きましょっか」

*******

そんなこんなで、街へと足を踏み入れた一行だったが、早々に行き詰まる事となった。街の様子、正確には街の住人の様子がおかしいのだ。 皆、遠巻きにこちらを見つつも、こちらから視線を向ければ、即座に視線を逸らすか、人によっては逃げていく者もいる。視線だけでこれなのだ。話しかける事など、出来るはずもなく、中には、小さく悲鳴すら上げる者までいた。
これは、商業施設も同様で、売店にも旅館にも拒絶されてしまったのである。

「……一体、どうなってんだこりゃ」

ほぼほぼ街を一周し、港へと戻ってきてしまった所で、オーアが声を漏らす。
その言葉には同意しかない。それほど、街の様子は異様だった。

「……僕の、せいだったりするのかな……」

不安げに、小さく呟くレンだったが、それはリーベが否定する。

「それは関係ないと思うわ」
「そうだね。君は用心深く、顔を隠していたし、怯えた視線はこの場にいる全員に向けられていた。街の方に何かあると思うのが自然だよ」

言い諭すように紡がれたエドアルトの言葉に、レンは小さく頷く。それを肯定するように、うんうんと頷いてみせてから、リーベはオーアと柚葉の方を振り向いた。

「それで? お2人さん、何が見えたのか話してくれない?」

オーアちゃんも、柚ちゃんも、私より感覚鋭いからね、と腕を組むリーベに、オーアは慌てたように首を振った。

「いやっ! 俺は別にっ……ただ、その、ここに着いた時から、何か、嫌な、こう……ざわざわした感じがする、って、思ったくらいで」

特に何か、気付いた事がある訳でもなく、端からレンにちょっかいをかけているナニカがいるのは確実なのだから、特に報告するものでもないと思ったのだとオーアは弁明する。それに、ふむ、と1つ息を落として、リーベは柚葉の方へと視線を向けた。
それを受け、柚葉が口を開こうとした、その時だった。

「やぁ! ようこそポートマラヤへ!」

唐突に響くのは、この街に着いてから今まで、全く聞くことのなかった快活な声だ。
反射的に全員揃って、声のした方を振り向けば、そこに居たのは、麦わら帽子を被った青年だった。襟と袖だけが赤く、他は青の上着に、茶色のベルト、白いズボンを身に纏ったその青年は、一行の視線が自分へと向いたと同時に、にっこりと人懐っこい笑みを浮かべ、口を開く。

「ここ、ポートマラヤは、これまで君たちが見た事ないような独特の雰囲気の街並みや、隣村バリオ・マヒワガの名物、ピンタドスフェスティバルなど、見どころはいっぱいだ。目一杯観光していってくれ!」

謡うようにそう紡いでから、青年は、笑みを苦笑へと変化させた。

「――と、言いたいところだが、ちょっとばかり来る時期が悪かったな」
「それは……今のこの街の状況のこと、だよな?」

確認するように問いかけたオーアに青年は頷いてみせる。

「あぁ。本当は、こんな事、わざわざ外から来てくれた人に言う事じゃあないんだが……実は、最近、街に悪霊が出没するんだ。それで、街の住民は皆、恐怖と不安に駆られている。中には、人間に化ける狡賢い悪霊もいてな……そのせいで、住民は知らない人には近寄らないようになってしまったのさ」

そう言う青年に、リーベは1つ息をつき、片手を腰に当てた。

「つまり、今、私たちがあそこまであからさまに避けられているのは、私たちが悪霊かもしれない、って疑われているから……って事ね」
「あぁ、そうだ。だから……彼らに悪気はないんだ。あまり、気を悪くしないでもらえると助かるよ」

困ったように笑う青年に、オーアは頭を掻く。

「ん~~……まぁ、事情があるってのは分かったけど……俺たちも用事があって、ここ、来てるんだよな。宿とか全く使えないのは、どうにか……いや、あんたに言ってもしゃーないか」

眉を寄せ、息を吐くオーアに、だから、声をかけたのだと青年は口にした。それに目を瞬かせたのは、柚葉だ。

「どういう事です?」
「この街の北に、ムンバキ・ポンという人物がいる。彼はこの街の指導者で、霊的な力を持っていて、街の住民に信頼されている人だ。彼に認められれば、皆もきっと安心してくれるだろう」
「なるほど。もし、悪霊が人に化けていたとしても、それを見抜く力のある、元から住民の信頼を得ている人物。そんな方から、危険はないと保証を頂けば良い、と」
「そういう事だ。地図は持ってるかい? 観光客用に配っている物があるから、そこにムンバキ・ポンがいる所に印をつけておくよ」

そう言って、ペンで丸が書かれたパンフレットのような形の地図を手渡してきた青年に、オーアは礼を言ってそれを受け取る。

「そうそう、ムンバキ・ポンには、ロデルに言われて来たと言えば良いだろう」
「ん。分かった。ありがとな」
「いやいや、このような時期で申し訳ない」

そう言って軽く頭を下げたロデルに、今までのやり取りを見守っていたエドアルトが口を開いた。

「1つ、聞きたい事があるんだけど……いいかな?」
「ん?」

疑問符を浮かべ、ターコイズブルーの瞳を見返したロデルに、エドアルトは問いかける。

「どうして、俺たちに声をかけてくれたんだい? 今の状況を聞く限り、君も、こちらを警戒してもおかしくはなかったと思うんだが」

その言葉に、ロデルは少し目を丸くした後、へらりと笑う。

「これでも一応、この街の警備隊に入ってるからな。治安維持のためにも、声かけは積極的にしていかないと。……ってのが、半分だ。これだけだったら、俺もそれなりに警戒してる所だが……君たちは冒険者だろう? こうやって港にいる事が多いと、自然と外の情報が入ってくるようになるのさ。外の職業である事を示す制服を着ている人に、悪霊がわざわざ化ける事はないだろうと、そう思ってね」

だから、たぶん港で働いている人なら、街中にいる人よりは怯えずにいてくれたんじゃないかと言うロデルに、そういえば、とオーアは思う。 港について、すぐ街の様子がおかしいと気付かなかったのは、ぽつりぽつりといた港の人間の対応は、街の人ほど過剰ではなかったからだ。……といっても、過剰ではなかっただけで、避けられはしたのだけど。
そんな事を思いつつも、納得した答えに、問いかけ主であるエドアルトが礼を紡ぎ、今度こそ、一行はその場を後にしたのだった。

*******

ロデルの元から離れ、ムンバキ・ポンのいる北へと足を向ける。
少し歩き、港からは離れたが、まだまだ街外れ、といった場所で、不意に、レンは立ち止まった。

「レン?」

どうしたのかと、オーアが声をかければ、レンは、ぽつりと口を開く。

「ん~……俺、ここで待ってるね」
「はい?」

唐突な宣言に、オーアの口から間の抜けた声が零れ落ちる。

「何言ってんだよ、レン」
「そっちこそ、何言ってんの、だよ。“僕”に名前がないの忘れた? そのくらい僕はここで疎まれてたんだ。街中、あんまり、出来るだけ、歩きたくないの、分からない?」
「あ……」
「それに、下手に一緒にいると、この不穏な状況の原因に仕立て上げられ危険性もあるしね。呪いの子、悪魔の子が戻ってきたからだ! って」
「っ」

あんまりな言いように、オーアは唇を噛み締める。そんなお人好しな青年に、レンは軽く肩を竦めて見せた。

「ここなら、人通りも少ないし。大人しく隠れてるから、よろしくね」

そう言った若草色の少年に、リーベは1つ息をつく。

「あなたの言い分は分かったし、まぁ、一理あるとは思うけど。1つ忘れてないかしら?」
「ん?」

小首を傾げた少年に、リーベは呆れた息を隠さず零すと、ぴ、っとレンへと人差し指を向ける。

「あなたは私達の護衛対象者なの。それを1人にする事なんて、出来る訳ないでしょう」

自分の出した依頼をお忘れ? と言うリーベに、レンは、あー……と意味のなさない声を漏らし、額に手をやる。

「確かに……そーだよねぇ……。でも、あんまり……う~……」

それでもやはり、行きたくはないらしい。困ったように呻き声を上げるレン。そんな様子を見て、軽く手を上げた人物がいた。

「――なら、私も共にここに居残りますわ」
「柚ちゃん……」

ひらひらと軽く手を振り、微笑んだ柚葉に、ぱちぱちとリーベは目を瞬かせる。レンにとっても意外だったらしい。くいっと首を傾け、柚葉を見る。

「いいの? これは僕のわがままに近いものなのに」
「依頼人の要望には出来るだけ応えるものでしょう? ……それに、街の住人が私達を知らないように、私達も、この街の指導者とやらを知りませんから」

にこり、と綺麗に笑った柚葉の言葉に、付き合いの差か、いち早くその意味を理解したリーベは、声を漏らす。

「あー……相手が頭固い可能性かぁ……」
「んん?」
「幼子だった彼を放置していたという、負の実績もありますし。慎重に動く必要はあるでしょう?」

笑顔のまま、そんな事を言う柚葉を見て、ようやくオーアも気づく。要するに、この朧の女性は、街の指導者とやらを信用していないのだ。とはいえ、先ほどレンが語ったような、よろしくない対応を、街の住人から信頼を得ている人物にされようものなら、動きやすくなるどころか逆に、ここでの活動が詰む。そこを踏まえれば、2手に分かれるのは、なるほど確かに、有効のように思えた。

「……となると、もう1人くらい残るべきか?」

そう口を開いたエドアルトに、柚葉は首を振る。

「いいえ。待機組の人数が増えると、それだけで人目を惹きますし、危険はないと保証してもらえる人数は多い方が良いでしょう。護衛、という観点からすれば、たしかに、あまり良くはないでしょうけど、同じ街にいる事ですし、そこは、何かあれば、パーティ会話でこまめに連絡を取り合う、という事でどうでしょうか?」
「確かに。その方が良さそうだ」

そんなこんなで、エドアルト、オーア、リーベの3人がムンバキ・ポンの元へ行き、レンと柚葉が待機と話が纏まった。
オーア達を見送りつつ、柚葉は口を開く。

「3人共、お気をつけて。……あまり、日陰には入らない事をお勧めしますわ。割とそれなりに、目につくくらいには、居ますから」

にこり、と笑って紡いだ忠告に、オーアは頬を引き攣らせる。

「え、と、それって……」
「言葉の通りだと思うわよ、オーアちゃん。街の中だけど、青石はいつでも使えるようにしておいた方が良いって事ね」
「うぃ」

その忠告に、オーアは神妙な顔をして、頷いたのだった。

*******

指導者の元へと歩いて行った3人を見送って、レンは1つ溜息をつき、しゃがみ込む。

「どうしました?」

しゃがみ込んだレンに、少しでも視線を合わせるかのように腰を折り、問いかけてきた朧の女性に、レンは苦笑を浮かべて見せる。

「ちょっと、疲れたかな。俺、あんまり体力ある方じゃないしね」

軽く肩を竦め、そう口にすれば、そうですか、と相槌のような言葉が返り、それきり、2人の間に沈黙が流れる。が、沈黙によって、気まずさを感じる性質ではないため、レンはそれを享受する。むしろ、ほっとした心地がした。
基本的に、今は無風で、けれども時たまに、むわりと生暖かい風が吹き、目の前に広がる緑を揺らす。その様を何となしに眺めていると、不意に、ぽつり、と横から声が落ちた。

「……もし、支障がないのであれば、1つ、聞いてみたい事があるのです」
「ん?」

柚葉の言葉に、レンは顔を上げ、柚葉を見る。けれども、彼女と視線が合う事はなかった。黒曜石の瞳は、レンではなく、ただただ、真っ直ぐに前を向いていた。

「……美味しそう。美味しい。とは、どういう、感覚なんですか?」

意外な問いかけに、レンは軽く目を見開いた。当然、それが、普通の食べ物等に対して抱く感覚の事ではないのは、分かり切っている。

「……なんで?」

少しだけ硬い声で問いかけるレンだったが、返ってくるのは沈黙だ。そんな柚葉の横顔を、微かに小首を傾げ、見上げた後、レンは、んー、と声を漏らし、考えるように視線を宙に上げた。

「……そう、だなぁ。……美味しそう、っていうのは、ホントにそのまんまだよ。……本能的なものなんだろうね。ただ単純に、美味しそうってそう思う。そう、思った……」

そう口にしてから、レンは深々と息を吐く。そんなレンに、柚葉は淡々と問いかけた。

「……それは、食べたいという、衝動とは、違うものですか?」
「違うね。……あぁ、いや……完全にそうとも言えないか。初めてオーアさんと会った時……僕は、ほぼ無意識に、誘われるように、あの人から魔力を奪おうとしたんだから。まぁ、すぐに我に返ったから、未遂だけど」

深々と苦い息を落とし、自重するかのように、レンは続きを紡ぐ。

「……自然と、人を食べたいなんて、そんな事思ってしまったのは、後にも先にも、その時だけだよ。不意打ちだったから、あの時は、魔としての本能の方が上に来たけど、今は、魔力的に飢えない限りは、大丈夫」
「……そうですか」
「うん」
「……それで?」

柚葉のその言葉に、レンはへ? と間の抜けた声を漏らす。それで、とは? それでも何も、ここで話は終わりではないのかと、柚葉を見上げる少年へと視線を向け、何かに気づいたかのように、柚葉は目を瞬かせてから、苦笑を浮かべた。

「すみません。説明不足でしたね。この問いは、貴方が“どう”であるかを見ていた訳ではなく、……単純に、知りたかっただけなのです。……向こう側からみて、あの人がどう見えていたのか。どうして、あの人が狙われなければならなかったのか……知ったとしても詮の無いことだとは分かっているのですが、たとえ、どんな答えだとしても、納得できるはずがないことも、分かっているのですが……」

きゅう、と強く手を握りしめ、言葉を紡ぐ柚葉に、レンは分かってしまう。

「……オーアさんと、同じ人、いたんだ」
「……えぇ、リーベさんの兄君がそうでした」
「そっか……だから、か。なるほどなぁ」

柚葉の言葉で、リーベのオーアに対する態度の理由に納得がいき、そう声を漏らしてから、レンは首を傾げる。

「……そんなのを、経験してるのに、知りたいの?」
「経験してるからこそ、知りたいのですよ。先ほども言った通り、知ったところで何も変わりはしませんから、気が進まないのであれば、無理を言うつもりはありません。ただ……それを知るには、今、貴方から聞くしかないと思ったものですから。……元凶には、既に、私達の最愛を奪った報いを受けていただいておりますし」

にこり、と微笑む、その笑みが恐ろしい。それが自分に対して向けられたものではないのは理解しているが、思わずレンは頬を引き攣らせた。

「……えと、そう、だな……」

顎に手をやり、考え込む。
僕が夢魔として本能的に感じているものを、人の感覚に表現しなおす、というのは、どうにも奇妙で難しく、自然を眉間にしわを寄せつつも、レンは口を開いた。

「ん~~……美味しい、は、美味しい、なんだけど……味的なものを本当に感じている訳じゃないんだよね。味に例えるなら甘いって感じではあるんだけど……ホントに甘い訳じゃなくって……ん~……面白い本を読んだ時の充足感と、色々参考になりそうな研究書を見つけた時に高揚感と、美味しいものを食べて満腹になった時の満足感を足して混ぜたような感じ……かなぁ。強いて言うならば、だけど」
「……なるほど」
「……と言っても、これは僕の感覚で、強いて言えば、ってだけだからね。僕の場合は、必要とするのは魔力だけだから。血肉を食らう種族なら、味覚にも影響がありそうだし、そもそも純粋な魔なら、僕より、もっと色々感じてるんじゃないかな、と思うよ」

軽く肩を竦め、レンがそう言った、その時だった。
ざわり、と遠くの方で、何か人の声が聞こえ、レンと柚葉は、はっとそちらに視線を向ける。
途切れ途切れに聞こえてくるのは、興奮気味な住民の声。ばたばたと響く足音。距離があるため、何を言っているのかまでは定かではないが、何かあったらしい事だけは察せられた。

「……オーアさん達、かな?」
「おそらく。何があったかは、ここからでは分かりませんが……こちらに何も連絡がないのですから、大丈夫ではあるんでしょう」

軽く肩を竦めて言う柚葉に、レンは、まぁ、そうだね、と同意する。
北の方で騒ぎが起きた影響で、人が向こうへと移動したらしく、今、レンと柚葉がいるこの付近からは、ただでさえ少なかった人の気配が更に減っている。正直に言うなら、非常に過ごしやすい。そんな事を思いながら、待機組はのんびりと3人の帰り、もしくは連絡を待つのだった。

*******

時は少し、遡る。

リーベ、オーア、エドアルトの3人は、遠巻きにしつつも送られてくる警戒の視線を受け流しつつ、北へと歩く。しばらく進めば、民家が増え、石で舗装された道が、土がむき出しになったそれに変わる。そこまでくれば、もう辺りには民家しかなく、地元民しか来ないだろう住宅街である事が察せられた。

「……この辺、かな」

周囲と地図を見比べながら、オーアは呟く。と、その時だった。
ギィ、とか細い音がオーアの耳に届く。反射的にそちらを見れば、とある一軒の住宅から、1人の男性が出てくる所だった。大柄で立派な髭を生やしたその男性は、オーアの視線に気づいたのか、こちらを見る。しっかりと視線が合ったにも関わらず、男性は、他の住民のように、逃げる事も、怯える表情を見せることもなく、逆に3人へと笑いかけてきた。そこで、オーアはようやく気付く。男性が出てきた家こそが、ロデルが印をつけてくれた場所であると。
3人は、一瞬視線を交わしあってから、男性の元へと歩み寄る。そんな彼らに、男性は鷹揚な笑みを浮かべ、口を開いた。

「海を渡ってきた人だね。若き旅人たちよ。ようこそ、ポートマラヤへ。私は、ムンバキ・ポン。霊的な力によって、街の人々を導く者だ。君たちは私を訪ねて来たのだろう?」

この辺りにまで、観光客が来ることはないからね、と言うムンバキ・ポンに、オーアは頷く。そして、ロデルに言われて来たのだと、口を開こうとするが、その声が紡がれる前に、ムンバキ・ポンの声が響いた。

「君たちは、ロデルに言われて来たのだね。分かっている……街の人達の態度の事だろう。私なら、彼らに顔が利くから、なんとか出来るだろうと、君たちを私の所へ寄越した。違うかね?」

穏やかに、そう問いかけてくるムンバキ・ポンに、オーアはゆるゆると首を振る。

「違わない、です」

そう言ったオーアの隣へと、リーベは一歩足を踏み出した。

「把握してくれているのなら、話は早いです。力添えをお願いできませんか?」

リーベの言葉に、ムンバキ・ポンは苦笑を浮かべた。

「旅人たちよ、とにかくよく来てくれた。心情としてはそれどころではないかもしれないが、まずは話を聞いて欲しい。ロデルからも聞いているだろうが、街の人たちの警戒心が強いからといって、どうか彼等を嫌いにならないで欲しい。彼等は不安なのだよ。最近、悪い霊たちが激しく暴れて、人々を苦しめているのだ……。魂というのは本来、森や海、大気といった大自然の守護者だ。私たちはこれまで魂と共に平和を祈っていたのに、どうして人々を苦しめるような悪い魂が現れるようになったのか……まったく分からないんだ」

ムンバキ・ポンの話を、表面上は神妙に聞きつつ、リーベは胸中で息を吐いた。

(これは……柚ちゃん、残って正解)

頼みごとをしに来たのはこちらだが、その返事をYesともNoとも言わず、大まかには既に聞いている話を聞かされたとなれば、実は何気に無駄を嫌う彼女の機嫌を損ねたのは間違いないだろう。……まぁ、目的がある以上、それが果たされるまでは、そんな素振りなど、ちらとも出さないだけの腹芸は容易に熟す人でもあるので、もし、共に来ていたとしても、表面上は何事もなく進むのだろうけど。
そんな事を考えていた、その時だった。不意にオーアが小さく息をのみ、バッと振り返る。次いで、リーベとエドアルトの耳も、小さな物音を捉えた。何の音かも定かではないそれは、ただの物音ではない事を、2人は自然と察し、警戒を強めると、いつの間にか、日が陰っただけにしては不自然なほど、辺りは暗くなっていた。

「むむ……さっそく来てしまったようだな。外から来た君たちの痕跡を辿ってきたようだ」

異変に気付いたムンバキ・ポンが唸り、オーアやリーベの見る方へと視線を向ける。そこには、ぽつり、ぽつりと蠢きながら姿を現し、近づいてくるいくつもの黒い影が在った。
今までオーア達を遠巻きに見ていた街の住人達も、それに気づくや否や、恐怖の声を上げ、影たちから逃げ出していく。

「で、出たー! 逃げろ、逃げるんだ!!」

普通、そんな叫びを上げようものなら、逆に相手の気を引きそうなものだが、影たちは街の住人には見向きもせず、真っ直ぐにこちらへと向かってくる。
その様子に、オーアはふと、レンが言っていた囮という言葉を思い出した。レンの言った通り、確かに、有効ではあるらしい。複雑な気分になりつつも、辺りに被害がいくよりは良いと割り切る事にし、影を見据える。

「オーアちゃん」

隣に立つリーベの声に、オーアはこくりと頷く。職が違うとはいえ、同じ退魔師だ。言いたい事はすぐに分かった。

「まだ堕ちきってはいないな。周りに影響を与えるだけの力はあるみたいだけど、その割に瘴気は少ないし。……となるとMEじゃなくても、か。リーベさん」
「OK、了解」
「壁は?」
「今回は大丈夫そうだから、私たちに任せて」

問いかけてきたエドアルトへと振り返り、片目を瞑って笑って見せたリーベの隣で、オーアが一歩、影たちの方へと足を踏み出す。

「彼等にあまり近寄らないように。魂を奪われる可能性がある」

オーアの行動にムンバキ・ポンが忠告するが、それに応えることはなく、影を見据えたまま、オーアの口が詠唱を紡ぐ。口早に唱えられたそれに呼応するかのように、影たちの足元から光が立ち上った。

「……これは、サンクチュアリ?」

何かあった時、すぐ庇えるようにと、退魔師2人の隣へと並んだエドアルトは立ち上る光を見て首を傾げた。
それは、パッと見、傷を癒す範囲魔法であるサンクチュアリのように見えた。けれど、それにしては何か、違和感がある。一瞬考え、そして、エドアルトは気づく。あの光がサンクチュアリによるものならば、不死・悪魔に類する種族であれば、足を踏み入れた瞬間、弾かれ、多少なりともダメージを負うはずである。けれども、今、目の前の影たちは、明らかに、不死・悪魔に類する種族と思われるにも関わらず、そんな様子はない。不快そうに顔らしきものを歪め、光の端の方へと寄っていた。が、どういう訳か、顔を歪めているにも関わらず、その光の中から出て行く事なく留まっていた。まるで、そこから出ることができないかのように。それもまた、奇妙である。サンクチュアリに、行動を阻害するような効果は何1つ、ないのだから。

「あぁ。これ、サンクじゃないよ。見た目と術式はすっごい似てるけど」

首を傾げるエドアルトに、詠唱完了し、自由になった口でオーアが声をかける。

「これ、退魔班特有の術式の1つなんだ。対幽霊用の聖域って感じかな。まだ、霊の状態なら、干渉されにくいけど、こっちも手を出しにくいから、1対1ならともかく、複数相手だと、場が欲しいんだよ。あと、拘束のためにもな。フリーの霊だと、アンソニどころじゃなく、めっちゃ逃げられやすいから」

何かに憑いてる状態なら、そうじゃないんだけどなー、等と言いつつ、陣の維持を行っているらしい。
オーアの魔力は流れたままだ。この状態では、他の行動は出来ないだろうに、これからどうするのかと思ったのは一瞬。すぐ隣から聞こえてきた声が、その答えを示していた。
オーアに代わって、詠うようにリーベが言の葉を紡ぐ。その声に、慄き、逃げようとしていた影が、1体、また1体と動きを止めていく。そうして、そのまま、ふわり、と空気に溶けるように影たちは消えていった。最後の1体が消え去った後、リーベは声を止め、ふぅ、と息を吐く。

「かーんりょーう」
「おつー」

そんな何気ないやり取りが交わされる頃には、いつの間にか、暗さも、肌寒さもなく、全てが元通りに戻っていた。

「やっぱ、2人いると楽だねぇ」
「だなー。1人だと、青石基点にして場作りして、効果切れる前に浄化完了させないとだもんなぁ。場、支えてくれる人いるとホント楽……」
「手強いのいると、場が切れて逃げられ、とかあるもんねぇ。何度、いっそ滅してやろうかと思ったか」
「分かる」

そんな和やかな会話をしているオーアとリーベを驚愕の視線で見るのは、一部始終を見ていた住人達だ。

「す……すごい! 悪い魂が消えていったぞ!!」
「この人たちは、悪い魂に対抗出来るすごい力を持った人たちなんだ!」
「異国からすごい力を持った冒険者が来たんだ! これでこの街も救われるに違いない!」
「早く皆にも知らせないと!!」

興奮した様子で、そんな事を口々に言い合い、住人たちはばたばたと駆け出していく。そんな中、ムンバキ・ポンは感嘆の息を吐いた。

「驚いたよ。あの数の悪霊たちをすべて浄化してしまうとは」
「まぁ……一応仮にも、退魔班の人間だしな」
「冒険者であるという事に加えて、霊も含めた、こういった相手を専門にする組織に加入していたために、対処法を知っていただけですよ」

にこり、と笑ってそう言った後、リーベはすっと真顔に戻って進言する。

「確かに、今出没した子達は浄化しましたけど、柚……私達の仲間の1人が、たくさんいる、と言ってましたから、この程度では焼け石に水でしょう。根本的な原因を見つけ、叩かなければ、あまり意味はないかと」

その言葉に、ムンバキ・ポンは重々しく頷いた。

「うむ。それは分かっている。今はまだ全く分かっていないが、原因は現在進行形で調査しているよ。だからこそ、今、住人たちにとって嬉しい知らせになってくれた事に感謝する」

そう言ってから、ムンバキ・ポンはエドアルトへと視線を向けた。

「それと、君の魂にも驚かされた。覚えているかい? 彼らが結界を張った時、中に居る悪い魂たちは戸惑い、居心地悪そうにするだけだった。それが逃げようとし始めたのは、君が近づいてからだ」

思わぬ言葉に、エドアルトは目を丸くする。そんなロイヤルガードに、ムンバキ・ポンは続きを口にした。

「君の魂はとても巨大で純粋だ。闇に染められた魂たちが圧倒される程にね」

非常に稀有なものを見せてもらったよ、と言ってから、ムンバキ・ポンは視線をその隣へと向ける。

「稀有、というなら君もだな。今まで見たことのない色と輝きの魂だ。いや、魂は千差万別なのだから、見たことないのは当然なんだが……他の人々の魂とは何かが一線を画している。こんな事を言われても、困惑するかもしれないが……色々と気を付けるように。その違いは、君にとっては……時には利となるかもしれないが、そうでない事の方が多いだろう」

自然とムンバキ・ポンの口から零れ落ちた忠告に、心当たりしかないオーアは神妙な顔をして頷く。忠告が素直に聞き入れられたことに、ほっと息をついてから、ムンバキ・ポンは気を取り直すように口を開いた。

「さて。思わぬ事ではあったが、今の出来事は、街の人たちの警戒を解くのに十分すぎるな。私から何かしなくても、この話を知れば、警戒していた人もきっと、君たちを歓迎してくれるだろう。もう1度、街を見て回ってくるといい。それでもまだ、警戒されていたり、他に困ったことがあったら、また訪ねてきなさい。いつでも歓迎しよう」
「分かりました。何かあったら、相談させていただきますね。話を聞いてくれた事、感謝します」

ムンバキ・ポンの言葉に、3任を代表して、リーベがそう応え、にこりと微笑む。

そうして、ムンバキ・ポンの所をお暇した所で、リーベは、ほぅ、と息をついた。

「とりあえず、何とかなった……のかしら?」
「たぶんなー。確かに、なんか、人が向こうに走って行ったのは、俺も見てるし」
「もし、何も変わっていなければ、もう1度、何か証明になりそうなものを貰えるよう頼むようだろうね」
「そうね……って、先に頼んでも良かったかしら」

頬に手を当て、そう口にするリーベに、あー確かに、オーアは同意する。

「ま、でも、すぐ戻るのもなんだし、とりあえうは、様子見かな。柚葉さんのとこ、戻る?」
「いや、先に、確認も兼ねて宿へ行かないか? 大丈夫だと分かった後の方があの子も少しは安心出来るだろう」

エドアルトの提案に、オーアは手を打つ。

「なる。確かに」

じゃあ、そっちに行ってみようか、とオーアがそう口にしようとした、その時だった。

「居たぞ! たぶん彼らだ!!」

少し離れた所から、突如響いた叫びに、エドアルトは反射的に、2人を庇えるよう、前に出る。
街の住民と思わしき人々が、3人の元へ辿り着き、詰め寄ってきたのは、その直後だった。

「お主たちが、悪霊が近寄れないという若者だろう!?」
「悪霊が近寄れないという、その気を分けて欲しいんです!」
「先生! 先生のお力でどうにか!」
「何でも良いので持ち物とか!!」
「先生の気が込められているものがあれば――」
「お願いします!!」

興奮した様子の人々から、次々に発せられる言葉たちは、声が混ざり合っているせいで、ひどく聞き取りずらかったが、皆、共通しているのは、気の込められた持ち物をくれ、というもののようだった。

「落ち着いてください。俺たちは持ち物に気なんて込めてないですし、何の効果もないですよ」

自分の後ろにいる聖職者2人に住民が詰め寄られることがないように、さりげなく横へと腕を伸ばしながら、困ったように眉を下げ、宥めるようにエドアルトがそう口にする。けれど、効果はあまりないようで、必死の形相で、街の人々は食い下がってきた。

「そんな事は!!」
「ケチなことを言わないでくださいっ!」
「気休めでも良いんですっ!!」
「きっと効果がある!」
「先生はバンドイが悪霊におびえていても、何とも思わないのですか!?」
「怖くて怖くて、震えが止まらないんだ……!」

口々に叫ぶ住民たちに、どうしたものかと思ったその時、つんつん、と軽く服の引かれる感覚に、オーアは視線を下げる。そこに居たのは、亜麻色の髪の幼い少女だった。

「おじょーさん、どうしたの?」

見上げてくるその少女の視線に合わせるように、オーアがしゃがみ込むと、少女はもじもじと、その小さな手で、己の服を、握りしめて、離して、を繰り返す。

「……タルラー……」
「タルラーちゃん、って言うの?」
「……ん。……あ、あの……こわい、の……」

元々、内気な子なのだろう。もじもじと落ち着かない様子で、それでも、精一杯伝えようと、少女は言葉を探しているようだった。

「その……タルラー、こわいの……おにいさん……こわいの、こない、って……えっと……だから……タルラーにも、その……こわいの、こないよう……に……えと……」

しどろもどろな説明であったが、前方にいる街の人々の言動もあり、何となく言いたい事が分かってしまって、オーアは、あー……と声を漏らす。

「怖がってるおじょーさんを、見て見ぬふりは、出来ないなぁ。……リーベさぁん」

リーベの方を向き、発せられた許可を求めるかのような声色に、リーベは軽く肩を竦めて見せる。

「別に私から許可を取る必要はないと思うわよ?」
「んー。それもあるんだけど、俺、作れるのって、この状況で効きそうなのって、1つしかなくって……柚葉さん呼んで、協力した貰った方が良いかなぁ?」
「柚ちゃんのは、価値的にも技術的にも制作必要時間的にも、無償で配れるようなものじゃないから、却下するわよ。というか、柚ちゃん呼ぶまでもなく、アレで良いんじゃないかしら。1番簡易な奴。お守りだし、アラームは抜く感じで……オーアちゃん、聖水は?」
「多少はある」
「なら、手分けして、作っちゃいましょーか。女の子1人に作って終わり。なんて、納得してくれるとは思えないし」
「……確かに」

思わず息をついてから、オーアは少女の方へと向き直ると、にこり、と笑って見せた。

「ちょーっと待っててな? 今、お守り作るから」
「……おまもり?」

ぱちりと目を瞬かせ、小首を傾げた少女に、オーアは頷き返す。
それを同時に、リーベは、エドアルトの横へと歩み寄り、住民たちへと視線を向けると、パン! と大きく手を打ち鳴らした。
突如響いたその音に、自然とその場にいる人々の視線がリーベの方を向く。

「皆さんの話は分かりました。……けれど、エドアルトさん……彼も言う通り、何の効果のない、私たちの私物を渡すつもりはありません」

きっぱりと断言したリーベに不満に声が出かかるが、それを封じるかのように、リーベはにこり、と笑みを作り、続きを口にする。

「で、す、の、で! 今から簡易的なものではありますが、私と彼とで、お守りを作ろうと思います。少々お待ちください。少なくとも、私たちの私物よりは効果があるのは保証します」

ブルージェムストーンや聖水を取り出し、既に準備を始めているオーアを手で示し、そういえば、一拍置いた後、わっと歓声が上がった。

*******

「……は~~、つっかれた」
「お疲れー」

肩を落とし、深々と息を吐いたオーアに、リーベは苦笑を浮かべると、労わるように、ぽんぽんと肩をたたく。

「まーぁ、あのお守りを大量に作るなんて早々ないもんねぇ。しかも、アレンジ利かせてさ。こんなのやったの私も初めてだもの。オーアちゃん頑張ったよ」

えらいえらいと、笑ってリーベの細い手がオーアの頭を撫でる。完全に子供扱いなそれに、オーアは子ども扱いするなと困り声を上げ、逃げ出した。共にいたエドアルトの背後に回り込むようにして、リーベと距離を取り、1つ息を吐く。そして、改めて先程の諸々を思い返したのか、オーアは視線を軽く上げてから、でも、と呟いた。

「喜んでもらえたのは……良かったなーって、思う」

頬を掻き、へらりと笑う。
思い出すのは、不安そうにこちらを見上げてきた女の子。それが、お守りとしての術式を刻んだブルージェムストーンを受け取ると、ぱあっと、花開くように表情を輝かせ、これがタルラーを守ってくれるの、と笑い、きれい、とブルージェムストーンに見入っていた。そして、とてもとても大事そうに手のひらに包んで、帰って行ったのだ。
それは、他の、大人たちも似たようなもので、皆、安堵の表情を浮かべ、礼を口にし、去って行った。その様子を見て、やってよかったと思ったのは素直な心境だ。
まぁ、手のひら返しな言い様に、思わず呆れた視線を送りたくなった輩もいたのだが。
そんな事を思い返していると、リーベはふわり、とエドアルトに笑みを向けた。

「エドアルトさんも。ありがとう。私達を守ってくれて。エドアルトさんが居てくれて良かったわ」
「どういたしまして。……と言っても、大したことはしていないけどね」

苦笑を浮かべたスプレイグリーンの髪の青年に、リーベはぱちくりと目を瞬かせる。

「あら。大したことじゃないなんて、エドアルトさんだから言える事よ? 私やオーアちゃんじゃ、街の人を抑える事は出来なかったもの」
「あー……だなぁ。集団で来られると、非冒険者相手だからこそ、どうにもできねーもん。もみくちゃにされて、物盗られそーになって、テレポで逃げる、とかなってそう」
「集団心理って怖いわよねぇ。一般人相手だと、害意があった訳でもないから、抵抗しようにも過剰防衛になりかねないし」
「それなー」

魔物と戦う力を持つ冒険者だからこそ、当然のことながら、その力を非冒険者へと向ける事は固く禁じられている。相手が犯罪者であったり、冒険者資格を持っていないだけで技能はあるなど、一部例外はあるものの、基本的には自衛のためだとしても、攻撃性のあるスキルを使った時点で、冒険者側に非があるとされる可能性が高いのだ。
そうなると、先程のような状況では、オーアやリーベのような完全後衛タイプの冒険者にとっては、非常に不利な状況に立たされるのである。

「だから……ふふっ、本当にエドアルトさんに協力依頼して良かったわ。今日はもう、柚ちゃん達と合流して、宿屋へ、ってなるでしょうから、また明日以降も、よろしくね」
「こちらこそ」

淡く頬を染め、微笑むリーベに、つられたようにエドアルトも微笑する。

『あら、お邪魔でしたかしら?』
「っ!!」

そんな時、突如リーベの脳裏に面白がるような色合いの柔らかな声が響く。その声に、リーベは思わず、びくっと盛大に肩を跳ね上げた。

「リーベさん?」

今の声は耳打ちだ。故に、何も聞こえず、急にリーベが肩を跳ねさせたようにしか見えなかったエドアルトがどうしたのかと心配の混じった声でリーベの名を紡ぐ。
それに慌てて、リーベは何でもないと誤魔化していると、あ、とオーアが声を上げた。

「柚葉さん! レンもっ」

駆け出すオーアの方を振り向けば、確かにそこにあったのは、耳打ちの声の主と護衛対象者の姿だ。あまりにもタイミングの良い事から分かってはいたが、やはり、近くで一連のやりとりを見ていたらしい。

「柚葉ちゃん!!」

非難めいた声で彼女の名を呼べば、柚葉は漆黒の髪を揺らし、ころころと笑う。

「人もまばらになって着ましたし。時間もそれなりに経っていましたので、彼と相談して、合流することにしましたの。もうすぐ日が落ちますしね」
「あぁ、なるほど。確かに、この状況じゃあ、暗くなってから別行動するのは危険だな」

エドアルトの言葉に、ええ、と頷いてから、柚葉はぱちりと目を瞬かせる。

「エドアルトさんがそうおっしゃるという事は、やはり、何かありましたのね」
「あぁ、実は――」

柚葉に別行動中の出来事を語るエドアルト。それを一緒に聞いていたレンに、オーアは話しかける。

「レンの方は? 何もなかったか?」
「そうだね。元々待機場所は人目に付きにくい所だったし、何か途中で、皆して、人がそっちに走って行って、更に人気がなくなったし、ゆっくり休憩させてもらった感じかな」
「そか」

レンの言葉に、オーアはほっと、息を吐く。そんな会話の切れ目を狙って、リーベは軽く手を叩いた。

「はいはい。後の話は歩きながらにしましょ。いい加減、宿へ行かなくちゃ。泊まれないなら、ポタとって一旦向こうに戻る必要が出てくるしね」

もっともな言葉に、皆頷き、一行は宿屋へと歩き出すのだった。

*******

さわさわと、どこからともなく虫の声が聞こえる。
ふわりと頬を撫でる風は潮気を含んではいるものの、陽が完全に落ちたためか、昼間のそれよりは涼やかだ。
夜、というよりは深夜という表現の方が似合う時間帯であるためか、街の灯りは殆どが落とされ、頭上で瞬く星の光が良く見えた。
宿の外へと出て、そんなポートマラヤの夜の街並みを見回しながら、オーアは1つ息を吐いた。
あれから、5人揃って宿へと赴けば、話は届いていたらしく、自分達が滞在している間は宿が安全地帯になった、と大袈裟なほどに大歓迎されたのだ。宿泊費を無料にすると言い出しかねない――正確には言い出したのを無理矢理遮って却下した――程の歓迎ぶりは、こちらが面食らったくらいである。 そんなこんなで無事、宿の確保は出来、今日の所は……となった訳だが、何となく、寝付くことが出来ず、オーアはこうして夜風に当たりに、宿の前で佇んでいたのだった。

「おや、先客か」

ふと、響いた聞き覚えのない声。
それに、オーアはバッと振り向く。宿の入口に立っていたのは、1人の男性のようだった。月明りにぼんやりと白衣が浮かび上がる。暗い中、すぐそれが白衣と分かったのは、暗い中の白は比較的目立つのと、ルキナやレンなど、身近にそれを着る人物がいたためだろう。宿から出てきた、という事は、同じ宿泊客か。そんな事を考えつつ、挨拶を口にすれば、向こうもそれを返し、こちらへと歩いてくる。嫌な感じはしなかったため、特に警戒することもなく、オーアはそれを受け入れた。

「こんな時間にこんな所にいるなんて、感心しないなぁ」

一見、小言のようなセリフだが、その声色は穏やかだ。故にオーアも笑って言葉を返す。

「それ言ったら、そっちだって、そーだろーに」
「まぁね。明日の準備や今日使った薬の補充や発注書の記入なんかをしていたら、いつの間にかこんな時間だよ」
「うわ、おつー……薬、って事は、薬師かなんかなのか?」

白衣着てるみたいだし、と口にするオーアに、男性は笑う。

「あぁ、これでも医者をしていてね。今はここで出張開業中、って所かな」
「なるほどなー」

病院がない町や村に医師が定期的に訪れて、診察をしていくという話は、そこまで珍しくもないため、男性もそれなのだろう、とオーアは納得する。

「お医者さんは大変だ」
「あはは。否定は出来ないな。だが、そっちもなかなかに大変そうじゃないか。“すごい冒険者さん”? 診察で手が離せなかったから、見に行く事はしてないが、順番待ちしてた患者がとてもそわそわしていたよ」

男性の言葉に、オーアは乾いた笑い声を上げた。と、昼間の諸々を思い出して、オーアは気付く。

「そういえば、あんたは、こんな時間に外にいて平気なのか?」

夜、特にこんな深夜だ。ただでさえ、霊が出やすいこの街で、こんな時間に外へ出るなど、悪霊に怯える人なら、絶対に出来ない所業だろう。故に問いかけると、男性は、あー、と意味のない声を漏らす。

「まぁ……全く怖くないと言えば嘘になるけど、悪霊なら心の持ちようでどうにかなるのは知ってるし……アレに比べたら、ねぇ」
「アレ?」
「あぁ、……えーと、ちょっと、怖い目には遭ったことがあってね、多少耐性がついたらしい。その時と比べれば、ってね」
「なるほど」

軽く肩を竦めて言った男性の言葉に、オーアは納得する。と、その時だった。ボーン、と宿の中から音が響く。続けてもう1度同じ音を発してから沈黙したのは、どうやら時計のようだった。

「もう、そんな時間か。さすがにこれ以上は明日に響きそうだから、私はこれで失礼するよ」
「おぅ、おやすみー」

時計の音を聞いて、男性は、はたと、そう言葉を紡いで、オーアに背を向ける。そして、宿の扉の前まで来たところで、ふと、立ち止まり、振り返った。

「そうだ。――申し遅れましたが、私、ブンと申します。街の人からはドクターブンと呼ばれることが多いですね。怪我や病気など、必要があれば、気軽に来てください。しばらくは、この宿にいるので」

仕事中の口調なのだろう、わざわざ丁寧な物言いをし、片目をつぶって見せたブンに、オーアは笑う。

「りょーかい。そん時はよろしくな。……ま、ケガも病気もしない方が良いんだけど」
「確かに」

笑って頷いて、ブンは今度こそ、宿の中へと消えていった。それを見送ってから、オーアは、くっと伸びをする。

「ほんっとは俺も寝ないと、なんだけどなぁ」

早く寝なければ明日に響くのはオーアも同じだ。けれど、普段ならとうに眠くなる時間だというのに、どういう訳か、今日は目が冴えてしまっていた。

「ん~……寝れる気はしないけど、横にはなっとくかなぁ」

頭を掻き、そんな事をボヤいた、その時だった。
きぃ、と音を立てて宿の扉が開く。そうして、ふらり、と扉の影から現れた小柄な人影に、オーアは軽く目を見開いた。

「レンじゃん。どしたんだ?」

ふらりと歩いてくる少年は、よくよく知ったもので、故に軽くそう声をかけるが、返事はない。まるで、オーアの姿が見えていないかのように、何一つ反応せず、ふらふらとレンは、宿の裏手へと向かって歩く。その様子は明らかにおかしく、ざわり、とオーアの背筋に悪寒が走った。

「おいっ! レン!!」

慌ててレンの元へと駆け寄り、その腕を掴む。そこまでしても尚、レンは何も反応を示さない。
ただ、腕を掴まれたことで、先に進めなくなり、その場にぼうっと立っているだけだ。
間近に来た事で見えたレンの表情は、瞳こそ開いているものの、虚ろで、何も移していないのが分かった。

「っ、レン! ”起きろ”!!」

声を荒げ、瞬時に紡ぐのは、悪夢払いの術式だ。
次の瞬間、ぱちん、と何かを弾いたような音がオーアの耳に届く。

「っ、~~ぃいったぁ……っ」

と、同時に、そんな声を上げ、レンは己の額をおさえるとその場にしゃがみ込んだ。その、声を反応に、オーアは深々と安堵のため息をついた。

「目、覚めたか」

そう声をかけると、レンは、はたと顔を上げ、目を丸くする。

「あれ。オーアさん? 何でこんなとこに。どうかした?」
「それはこっちのセリフだ。ってか、レン、お前、ここがどこだか分かってる?」

その言葉に、え、と声を上げ、レンはようやく辺りを見る。
そうして、目に映る、深夜のポートマラヤの街並みに、もう1度、小さく、え、と呟いて……ザッと、青ざめた。己の身に起きた事態が理解できたらしい。

「8割方、答え分かってること聞くけど、夢は?」
「想像の通りだよ。覚えてない。干渉どころか、侵蝕までされてる以上、見てない訳、ないからね」

夢を通じて現身である身体を操られるなど、干渉の段階では不可能だ。即ち、次の段階である侵蝕まで既に入ってしまっているという事だ。干渉が阻止出来てない以上、いずれ侵蝕までされるのは、覚悟の上だったが、だとしても、早すぎる。
はぁぁぁ、と盛大に苦々しい息を吐き出し、レンは、くしゃりと己の髪をかき混ぜる。

「物理的距離が縮まったら、その分影響は増すかなとは、ある程度覚悟してたけど、予想以上とか、ホント勘弁して欲しいよ」
「もしくは、レンがフィゲルにいる内はわざと干渉しかしなかったか、だな」

オーアの言葉に、レンは顔を上げ、紅の瞳を向ける。

「どういう事?」
「ん? や、単純な話だぞ? フィゲルにいるレンに対して、侵蝕して、身体を操ったとしても、フィゲルとポートマラヤは物理的に距離がありすぎる上に、海を隔ててるからな。船に乗ったり、ポタを頼んだりするには、意識や思考まで、完全に支配下に置きでもしないと不可能だろ? だから、干渉だけして、自主的に近くまで来るよう狙ってた可能性もある、って事だ」
「……あ~~、で、思惑通り、僕が来たから、じゃあ後は、もう、自分の手元に来させるだけ、って? あーもー! やだやだ、帰りたい」

傍から聞けば泣き言にしか聞こえないだろう言葉に、オーアは苦笑する。

「んな事言って……帰る気なんて、欠片もねーくせに」
「当たり前でしょ。誰が火の粉をあの子に近づけさせるかっての」

ルキナに危険が及ぶかもしれないものを、近づけさせることは決して許容できない。それは自分自身であっても、例外ではないのだ。
故に鼻を鳴らしてそう言ってから、レンは腰に手を当てた。

「ま、元々火の粉を叩き落しに来てるんだから、やる事は変わんないんだけどね。……でも、起きてる俺の意識を強制的に夢へ引きずり込めるくらい侵蝕されたらその時点で詰みかねないから、それまでに、っていうタイムリミットは出来たか」
「どっちにしろ、早々にカタつけた方が良い事には変わりねーだろ。順番にやったとしても不寝番が続いたら、こっちが不利になる」

その言葉に、レンはぱちりと目を瞬かせ、きょとんとした顔でオーアを見る。

「不寝番? 何で?」
「あ、の、なぁぁっ! お前、さっきの今でもう危機感無くしたのっ?! いくら、悪夢払いかけておいたって、絶対大丈夫って保証はないんだからな! レンが寝てる間に操られた時、対処できる人が必要だろーがっ!」
「あぁ……そういう。大丈夫だよ。こうなった以上、俺、もう火の粉叩き落すまで、寝ないでずっと起きてるから」

確実に主導権取られるって分かってるとこに、自分から行くわけないじゃん、と何てことないように言ってのける少年に、オーアの瞳が丸くなる。

「いや、おま、そっちのが無茶だろ」
「あーのーねぇ。忘れてない? 僕は半分夢魔なの。その気になれば、睡眠のコントロールなんていくらでも好きにできるの。まぁ、眠らないにしろ、眠りすぎにしろ、自然のそれじゃない分は、それ相応の魔力は消費する事になるから、必要に迫らせないとしないけどね。でも、そうやって睡眠のコントロールをしてる間は、寝不足とか不調は発生しないから安心してよ。この辺は俺が半魔で良かった点だよね」

オーアの言葉に、呆れた目線を投げてから、そんな事を笑ってレンは言う。

「ま、補助と保険のために、目覚ましになる薬でも作っておくかな。あれなら、カプラさんのとこ行かなくても、手持ちので作れそうだし」
「おーい。お前、今商人だろーが」
「バレなきゃ問題ないし、バレても、これただの製薬だもん。注意程度だろうから平気だよ。創作魔法薬の実験とか、アシデモみたいなスキルとか、作った薬の販売とかやったらさすがにヤバいけどね」

にこりと可愛らしく笑ってみせてから、レンはくるりと背を向けた。

「ま、そんな訳で、俺は戻るねー。オーアさんはちゃんと寝なよ」

ひらり、と手を振り、立ち去ろうとしたレン。それを見送ろうとしたオーアだったが、次の瞬間、ざわり、と走った悪寒に、咄嗟にレンを呼び止めた。

「レン!」
「ん? どしたのオーアさん、まだ何かあった?」

振り向き、きょとんと小首を傾げたレンに、我に返ったオーアは、あ、いや、と口ごもる。
特に用があった訳ではない。何となく、嫌な予感がして、反射的に呼び止めてしまっただけなのだから。けれども、それを言うのも、なんとなく憚られて、頭を掻き、えーと、と口を開く。

「ま、魔力、いる、か?」
「へ?」
「いや、だって、ずっと起きてると魔力使うみたいな事言ってたじゃんか」

その言葉に、レンは目を丸くした後、くすくすと笑う。

「まぁいいや。それで誤魔化されてあげるよ」

そう言うと、レンは、オーアの手を取り、その指先にそっと口付けた。刹那、するりとオーアの指先から魔力が抜けていくのを感じる。しかし、その量は微かだ。

「ごちそーさま」

そう言って、手を離したレンに、オーアは眉を寄せた。

「ホーリーライト1発分くらいしか減ってないんだけど、それで足りんの?」

普段よりも少ないんだけど、と言うハイプリーストに、十分十分とレンは返す。

「元々、今回、準備は万全にしてきた上に、今日は俺、あんまり動いてなかったからね。そもそもあんまり消耗してないんだよ。……必要になってくるとしたら、これから先、長期戦になったらかな?」

だから、そうなったら、その時はよろしくね。
そう言って、レンは今度こそ宿の中へと消えていく。それを見送って、オーアは深々と息を吐いた。

「まっじで、起きてて、気付けて良かったぁぁ」

もしもいつも通り、自分が眠ってしまっていたら、翌朝どうなっていたか、なんて想像するだに恐ろしい。

「……長期戦、か」

ぽつり、と呟く。レンはそう言っていたが……いや、当事者である以上、彼も分かっているはずだ。長引けば長引くほど、こちらが不利になる、と。

「……ホントに、さっさとカタ、つけないとな」

その言葉の後に続いて、オーアの口から欠伸が零れる。
くぁ、と小さく声を漏らし、オーアは軽く己の目を擦った。予想外の出来事に、一気に緊張状態になり、ほっとそれが解けた格差のせいか、先程までの目の冴えようが嘘のように、眠かった。何より、とっくに寝なければいけない時間である。もう1度、欠伸を零してから、オーアも宿の中へと消えていったのだった。

be continued

あとがき
話を切るとこは予定通りだったんだけど……お、思ったより、長くなった。……いつもの事だって? 知ってますぅ……
まぁ、それはともかく。簡略化&改変してるえど、警戒する街と街の救済者は9割クリアです。
にしてもこれ、お守り代わり(本作中ではちゃんとお守り作ったけど)に青石と聖水配ったけど、あれ、皆、普通に持ってるもの的に言われてたけど、アコ系かSW使えるマジ系くらいだと思うんですが! 青石とか日常的に持ってるのって!! 前衛職がこのクエやったら、どう進むんだろうね。他の人が書いたの、とてもとても見てみたい。
あと、オーアやリーベが今回使ってた術やお守り作成スキルは、退魔班で習得したもので、ゲーム的にはクエで獲得できるスキル的な扱いをイメージていたり。でも、使用できるのは、クエ中のみで魔物との戦闘には向かない感じなので、取る人(=退魔班に加入する人)は少ない感じかな! そも、退魔班が、プリ系且つ退魔スキルの所持が加入条件だしね!!(例外的に、殴りでも可ではあるらしいけど)
まー、迷える魂を送ったり、悪霊浄化したり、呪われた品を浄化したり、そういうのから依頼者守るのにお守り作ったりだからね。そんなの、冒険者のスキルとはまた別のスキルが必要になるのは当然だと思うのです。
ちなみに、作中で、2人が配ったお守りの効果は、有事の際、弱めのキリエが所有者にかかる感じ。本来はそれに加えて、効果発同時に、製作者へ耳打ち的なアラートが行く仕様になってたんだけど、アラート効果は、今回意図的に抜いてあったり。正式な依頼じゃないので、そこまでする義理はないって事らしい。
作中で言ってたアレンジ、ってのがそれ。さらについでに、それを支持したのはリーベさん。もし、オーアだけで作ってたら、アラート機能もちゃんとつけて、後日、アラートが鳴るような事があれば、駆け付けてくれてた。そのくらいには、お人よし。
ぶっちゃけ、無償依頼でそこまでする義理はないので、リーベさんのが正しい。
エドアルトさんは、護衛依頼で来てるので、必要な提案とかはするけど、基本的には、退魔組がやる事を見守ってる感なイメージ。その分、悪霊が出たときとか、住民たちに詰め寄られた時とか、いち早く守れるよう動いてくれてる……んだけど、ちゃんとそれ、表現出来てたかなぁ……(´・ω・`)
あ。悪霊のシーンは、オーアが最初に気づくのは仕様です。彼が1番そういうのには敏いからね。今回のPTメンバーだと次に敏いのは柚さんだけど、あの時は待機組だったからなー。
ちなみに、勝手な想像だけど、エドアルトさん、現時点では、まだ特に役立ってないって思ってそうだなー、と思ったり。自分の出番は戦闘が起こったら、で、まぁ、なので、本当は出番がない方が良いんだけど的な事は思ってそう。でも、お守り配布のMVPって、割とホントにエドアルトさんなんだけどね。退魔組も言ってたけど、彼が居なかったら、お守り作成&配布って流れにはそも、出来なかったので。でも、本人にその自覚はなさそうだなーって、思っていたり。たしかに、人数はいたけど、非冒険者だし、大したことはしてない認識してそうっていうか、そのあたり、エドアルトさんに限らず、前衛職と後衛職とでは温度差がありそうだなー。
合流時、柚葉さんの一言はわざと、っていうか、今までの意趣返し。ヴィレさんが存命の頃、けっこうかなり、色々言われてたから、ちょっと同じことをやり返してみたかったらしい。でも、それを耳打ちでやってるところは、気持ちを隠してるリーベさんにちゃんと配慮はしてるのです。
最後の夜のシーンは、オーアが幸運判定に成功したから発生したようなものですな。もし、オーアが起きてなかったら、翌朝、レンが失踪状態からのスタートでした。まぁ、それでも良かったんだけど、それすると、1つ2つくらい潰れるシーンが出そうだったしね。
さてはて、これで、次から割とメインな(割と、がつくのは、また途中で話が逸れる可能性が高いからなんだな)、新任看護師と病院、に入れそうかなー
……そして、私は、今からエドアルトさんの親御さんに土下座する準備をしといたほうがいいな……。うん、役回りがね……うん……条件的に合いそうなのが、エドアルトさんのみになりそうでな……大筋は決まってるけど、細かいとこがまだだから、まぁ、予定変更の可能性もまだありはするけど……
とりあえず、続き、頑張る。……4話くらいで終わるんじゃないかなぁ。終わると、いいなぁ(ぉぃ


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