『オーアちゃん、起っきろーー!!』
「っ!!?」
突然脳裏に響いた大声に、オーアはがばっと飛び起きた。
慌てて、身支度を整え、昨日己に割り当てられた部屋を飛び出し、宿の食堂へと向かう。ここの食堂は宿泊客以外にも解放してるらしく、この街の住民らしき人の姿もちらほら見える中、探していた姿はあっさりと見つかった。そちらへと赴けば、自分を除く全員が既にテーブルについている状態だった。
「おはよう、オーアちゃん」
「おはよ。悪い、ちょっと寝過ごした」
オーアに気付いて声をかけたのは、先程、耳打ちと言う名のモーニングコールをかけたリーベである。ミルクティー色の瞳を細め、笑いながら、リーベは、オーアも席に着くよう促す。既に朝食の用意は整っていたらしく、テーブルに並べられていたのは、狐色のトーストに、見るからにふんわりとした黄色のオムレツ。透明の小ぶりの器に盛られた瑞々しい黄緑色の葉野菜にその上にとろりとかけられた白いドレッシング。実にオーソドックスな朝食だ。トーストの上に鎮座する淡い黄色のバターがとろりと溶けつつもまだその身を保っている所を見ると、この朝食が供されてから、まだそれほど時間は経っていないらしい。
そんな事を想いながら、席に着けば、一足先に朝食に手を付けていた柚葉がその手を止め、小首を傾げた。
「それにしても、この状況で寝過ごすとは、昨夜、何かありましたか?」
咎める、というよりは、単純な問いかけだろう。さらりと漆黒の髪を揺らした柚葉に、オーアは目を瞬かせ、次いで、バッと同じテーブルについているレンを見る。その視線を訳するならば、「お前、言ってねぇの!?」だ。
『……報告は、オーアさんが来てからしようと思ってたんだよ』
透明なグラスに入った野菜ジュースか何からしい赤い液体をストローで吸い上げつつ、敢えてPT会話で発せられた声に、全員揃ってレンの方を見る。
『何かあった、って事ね』
そう言ったリーベに、レンは軽く頷き返す。
『ん。タイムリミットが出来た感じかな。……詳しい事ってか、客観的なとこはオーアさんから聞いてよ。俺だと、気が付いたら外にいた、って状態だったから』
『あー、そっか』
レンの言葉に納得の声をもらし、オーアは口を開く。
そうして話すのは、昨夜の出来事だ。
一連の話を聞き、リーベは眉間にしわを寄せ、腕を組んだ。
『……なるほどね。確かに、侵蝕まで段階、進んじゃってるのは、まっずいなぁ』
『だよなぁ。っつても、そうなっちゃってるものをどーにかする事は出来ねーから、まぁ、さっさと元を叩くしかない訳で』
はむっと、見た目通りにふわふわなオムレツを口に運びつつ、オーアがそう言った所で、エドアルトが口を挟んだ。
『――すまない。良くない事態なのは分かるんだが、干渉と侵蝕について、教えてもらっても良いだろうか?』
その言葉に、あ、そうだった、とオーアの口から言葉が零れる。自分やリーベは職と所属的に専門であるし、レンは己自身が半分、魔なために、本能的に理解しているようだ。柚葉も立場的にはエドアルト側のはずであるが、そういった事に深く関わっているらしく、退魔組と遜色ない知識を持っている。周りがそんな感じだったので、つい、配慮が抜けてしまっていた。それを詫びてから、オーアは再び口を開く。
『んっと、まず、最初の前提として、夢魔は悪魔族とされているけど、認識ってか、対応は幽霊とか、そっちに近い。ってのも、そいつらは肉体を持たない種族だからだ。力の弱い奴は実体すら持ってないんで、そーゆーのは物理的に倒すのはほぼ無理。ま、だから、退魔班に依頼が回ってくるんだけど』
『という事は、サキュバスやインキュバスみたいなモノとは根本的に違う、と?』
『退魔班内だと、サキュインキュは夢魔の能力を持った淫魔認識かな。魔物として種族が認識されるくらいにはそれなりに力が強いしね。普通に襲ってこれるし、こっちも普通に戦えるくらいだもの。私達が夢魔って呼んでるのは、物理的な干渉能力が低くて、イメージ的には、精霊とか幽霊とかに近い、ワルイモノ。種族すらも確立出来てないそれらをひっくるめて夢魔、って呼んでるの』
『幽世の住人は、私達の存在する現世に干渉出来るようになる事を強く望んでいますから。故に、無意識の海を通じて、人の夢へ、そして心へ、干渉してきますの』
柚葉の言葉に、エドアルトは微かに眉を寄せる。幽世や現世も聞きなれない言葉ではあるが、おそらく、あの世とこの世的な意味なのはなんとなく理解できる。けれど、1つ全く分からない単語があった。
『無意識の海?』
それを復唱すれば、リーベは1つ頷いてみせる。
『人の精神世界を深く深く潜っていくと、意識、無意識、深層心理、って、人が意識出来ないの領分へ入っていくんだけど、その無意識の奥の奥は全ての人が皆、同じ所に繋がっていて、その無意識の集合を無意識の海って呼ぶらしいの。だから、そういったモノ達からの干渉には、物理的距離はあまり意味をなさない、って言われてるわ』
『ま、実際、フィゲルにいる時から干渉されてるしね。捕捉されたら距離は関係ないって感じじゃない? まぁ、だからといって全く関係ない訳でもないだろうけど。物理的距離が近い方が、捕捉も干渉もしやすいみたいだからね』
『で、だ。本題の干渉と侵蝕だけど、夢を通じて対象者の無意識に入り込み、自分の場として作り変えるのが干渉。それが対象者の意識とか、体とかまで及んで来たら、侵蝕、って感じかな。……んーと、あ。あれだ! シロアリと家みたいな! シロアリが家に巣作ってるとこが干渉で、巣が出来て、大きくなって、家に隙間風入るようになったとか、家主にも何かしら影響が出てきてるのが侵蝕的な感じになるな』
『ちょっと、その例え、本気で止めてくれない? 今ここに、まさに今、それ受けてるのがいるんだからさぁ、気色悪すぎてザワっ、てするんだけど』
本気で嫌らしい。顔を歪め、自分を掻き抱くように腕を回すレンに、オーアは真顔で頷いた。
『分かる。俺もあーゆーの無理』
『なら何でわざわざそれを例えにした訳!?』
思いついちゃったからだな、バカなの、等々ときゃんきゃん続く言い合いを華麗にスルーし、程よい温かさにまで覚めたトーストをちぎりながら、柚葉が言葉を紡ぐ。
『まぁ、簡単に言うのなら、そんな感じですね。あと、タイムリミット、というのは、オーアさんの例えで言うのなら、白蟻が家を壊して家主ごと押しつぶすなり、家主を追い出すなりする前に、白蟻をどうにかしないといけない、といった所でしょうか』
『なるほど。ありがとう。――そうすると今日は、相手の居場所探しか』
『そうなりますわね。わざわざ向こうから手掛かりをくれた事ですし』
『手がかり?』
小首を傾げたリーベに、あら、気付きませんでしたか? と柚葉は微笑し、オーアを呼ぶ。
その声にオーアはパッと言い合いを泊めると柚葉の方へと視線を向けた。
『柚葉さん、どした?』
『昨日の夜、レンさんが向かおうとしていたのは、この宿の裏手の方向、でしたよね?』
『ん。そうだけど』
『――あぁ、なるほど。確かにたいぶ絞れるね』
柚葉とオーアの言葉に、得心したようにエドアルトは頷き、ヒントとなる言葉を付け加える。
『方角で考えると分かりやすいんじゃないかな? この建物の向きと、彼が行こうとした方向の話だからね』
『……あ。そっか、大体半分くらいに絞れるのか』
『それもだけど、街中なのが確定したのが個人的にはありがたいわ。バリオは結構広いし、強いのが多いから、あそこを探すのは大変だもの』
そう言ってリーベはほっと息をつく。
この旅館は、大体街の中心に位置しており、出入り口は北東を向いている。ポートマラヤは南が海に面しており、街の外へは北東から出るのみだ。そして、操られたレンが向かおうとしたのは旅館の裏手。この3つの条件を踏まえると、相手が潜んでいる可能性が高いのは、宿の南西方面、裏手から、宿の横手へ行った可能性も踏まえれば、宿の北西から南東まで。ざっくりと街半分程度にまでは範囲が絞れる、という訳である。
『あ~……となると失敗したかなぁ。昨日、あの時、もうちょいレンを泳がすべきだった?』
咄嗟に悪夢払いをかけて叩き起こしちゃったからなぁ、と眉を寄せ呟くオーアに、リーベは首を振る。
『それはしなくて正解よ、オーアちゃん。相手がどこに潜んでいるのか分からないのだから、少し探るつもりでも、うっかりテリトリーにまで足を踏み入れてしまって、2人揃って攫われる可能性があったもの』
『むぅ……』
そこまで弱くない、と言いたかったが、現状、オーアはまだ転職許可が下りていないハイプリーストである。3次職には格段に腕が劣るのは明白なため、正論だろう。そうでなくとも、力量に関係なく、不意打ちをくらったらまずいのも確かだ。故に、小さく声を漏らして、自ら反論を封じたオーアに、リーベは苦笑を浮かべ、声をかけようとした、その時だった。
「食事中にすまないな。少しいいかい?」
こちらへと歩み寄り、かけられた声に、5人は揃って声の方を見る。そこにいたのは、昨日出会った麦わら帽子を被った青年、ロデルだ。
「はよ。わざわざどーしたんだ? こんなとこに」
ロデルから1番近くの席に座っていたオーアがそう問いかけると、ロデルは苦笑して口を開く。
「昨日は街の皆が世話になったみたいでありがとう。それをムンバキ・ポンも感謝していて、礼が言いたいから来て欲しい、って伝言を届けに来たんだ。無理にとは言わないが、出来るなら、会いに行ってくれるとありがたい」
その言葉に、オーアとリーベは視線を交わす。そして、口を開こうとするが、それよりも早く、柚葉がにこり、と笑みを浮かべた。
「分かりました。ぜひ、この後、伺わせていただきますね」
笑みを浮かべ、言ったその言葉に、ロデルもほっとした笑みを見せる。そして、一言二言言葉を交わし、去っていくロデルを見送って、柚葉は視線をリーベ達の方へと戻した。
『話を聞きに行く、良い口実が出来ましたね』
『って、事は柚葉さん、始めからあっちにも話、聞きに行くつもりだった?』
『えぇ。一応仮にも街長ですもの。何かしら耳に入っている可能性はあるでしょう? それともう1つ、聞きたい事もありますし』
そう言ってから、柚葉は、頬に手を当てた。
『問題があるとすれば……行きたくない場に、レンさんを連れ出すことになってしまう所ですけど……』
『ぐっ……』
呻き声を漏らしたレンに、さてどうしようかと柚葉は考える。正直な所、街長から聞きたい事を考えれば、昨日同様、レンには、待っていて貰った方が都合が良い。けれど、報告を聞く限り、そろそろ2手に別れるのも危険である気がした。
『てか、レン。そんな調子で、もし俺がリーベさん達にヘルプしないで2人だったら情報収集とか、どうするつもりだったんだよ。まぁ、気持ちは分かるけどさぁ』
呆れたように言うオーアの言葉はもっともだ。それにレンは憮然と答える。
『そもそも、僕はそーゆーことする気なかったし。オーアさんと2人でいれば、確実に釣れる……向こうからやってくると踏んでたからね』
『お願いだから、あんまり危ない手段を執らないで欲しいんだけど……』
『……そんな危ないかな? いや、それなりのリスクがあるのは分かってるけど』
きょと、と不思議そうな表情を浮かべるレンに、リーベは深く深く息をつく。
『オーアちゃんがこっちに助っ人依頼、出してくれてホント良かった……』
『あはは……』
しみじみと零すリーベに苦笑してから、で、結局どーするよ、とオーアは話を元に戻す。
『侵蝕速度考えると、そろそろ2手に別れるのも良くない気はするけど』
『それなのよねー・まぁでも、相手の活動時間は夜でしょうから、昼間の内なら大丈夫だとは思うわ』
『……なら、今回は俺が待機してようか? 街長の所に話を聞きに、と言ってもそこまで時間がかかるものでもないだろうし、さっきの話から考えると、範囲外である北方面に多く目があったもあまり意味は無いだろう? なら、無理はせず、ここで待機して、街長の所で話を聞いた後、合流して一緒に動く、というのはどうかな?』
エドアルトの提案に、レンはこくりと頷く。
『ん。そうさせてもらえるなら、俺としてはすごくありがたいな』
『……うん、良いんじゃないかしら。エドアルトさんなら、何かあっても対処できそうだしね』
『んじゃ、俺とリーベさんと柚葉さんで、さくっと話聞きに行って、残り2人は待機って事で』
*******
ムンバキ・ポンを訪ねるため、宿を出て歩き始めた所で柚葉は、1つ息を吐いた。
「ん? 柚葉さん、どうかした?」
それに気付いたオーアが、歩きながら首を傾げれば、柚葉は苦笑し。軽く手を振る。
「いえ、大したことではありませんわ。……今回に限っては、レンさんと別行動になったのは僥倖だと思いましたので、少し、ほっとしてしまっただけですから」
「あー……柚ちゃんが聞きたいのって、そーゆー事かぁ。なら、確かに、本人の前ではちょっと聞きづらいよねぇ」
納得したらしく、しみじみとした声を漏らすリーベに、オーアは疑問符を浮かべた。
「そーゆー事?」
「あの子の出自よ。私も気にはなってたのよね。本人は物心ついた頃から疎まれてたって言ってたけど、迫害される何かがあったから、そうなったんでしょう? 本人が、覚えていない頃に。それがレン君本人なのか、それについてたナニカなのかは分からないし、そもそも何かがあったかどうかも定かではないけど、何にせよ、何かしらのヒントにはなるわ」
「先程の、あの食事量を見るに、かなり魔に寄っているようですから、人の手が必要な赤子時代は、そもそも人里にいなかった可能性も充分ありますけどね。それでもなにか、彼も知らない、彼についての事を街長が知っている可能性は高いと踏みましたの」
その言葉に、オーアはなるほど、と納得の声を漏らす。と、見覚えのある小道が見えてきた事に気付く。自分とリーベは既に通った道だが、昨日待機していた柚葉は初めての道である。故に、こっち、と柚葉を先導し、オーアは歩くのだった。
「やぁ、よく来てくれた。街の人々の落ち着きを取り戻してくれた事、街の人々を導く者として、私も感謝しているよ」
訪ねてきた3人を笑って出迎え、そう礼を述べるムンバキ・ポンに、微笑を浮かべ、リーベは緩く首を振る。
「私達の出来る事をしただけですから、礼には及びません。……けれど、1つ、伝えなければならない事と、聞きたい事があったので、訪ねさせていただきました」
リーベの言葉に、ムンバキ・ポンは、ほぅ、と声を漏らす。
「言ってみなさい」
「では。私達が作成し、街の住民に配ったお守りですが、あれは、その場しのぎのものです。守りも、1度しか発動しません。なので、この事態が続く……収束のめどが立っていないのであれば、今からちゃんとしたお守りの準備はしておいた方が良いかと」
りーべの進言に、ムンバキ・ポンは鷹揚に頷く。
「あぁ、街の人々の事を気にかけてくれてありがとう。大丈夫だ。私の孫娘のイメルダーがお守りの作成を手伝ってくれることになった。これで、次からはこちらが用意したお守りを配る事が出来るだろう」
その返答に、リーベはほっと小さく息をつく。その横顔をちらりと見てから、柚葉はムンバキ・ポンを見据え、口を開いた。
「お初にお目にかかります。彼女たちの仲間の1人である柚葉、と申します。私から1つ、お聞きしてもよろしいかしら」
おっとりと首を傾げ、頬に手を当てる柚葉に、ムンバキ・ポンは頷く。
「私に分かる事であれば、答えよう」
「ありがとうございます。不躾な問いで申し訳ないのだけど……数年前にこの街から姿を消した、若草色の髪の幼子について、心当たりはありますかしら?」
おっとりとした口調の中に、ひやりとしたものを潜ませ、紡いだ問いかけに、ムンバキ・ポンは軽く目を見張る。僅かな間、柚葉の黒曜石の瞳と視線が交わった。
「……なるほど。そういえば、君達は5人で行動していたな」
「えぇ。それが、何か?」
「いや、君達に邪な気がないのはよくよく分かっている。先程の言葉を違える気はないよ。君達が聞きたいのは、あの子の出自だろう?」
そう言ってから、ムンバキ・ポンは一呼吸置き、ゆっくりと口を開いた。
この街に、とある1人の娘がいた。
幼い頃に両親を亡くし、祖母と暮らす、明るい娘だった。金色の髪に、淡い紫の瞳の娘だった。
ある時、娘は恋をした。相手は定かではないが、海の向こうからやってきた船乗りだったらしい。結果的に娘の恋は実った。けれど、だからこそ、船乗りが海の向こうへ帰る時が来た際、船乗りとの別れが受け入れられず、娘は、祖母の反対を押し切って、船乗りと共に街の外へと飛び出していった。
……けれど、数年後。娘は帰ってきた。子供を身ごもり、憔悴した様子で戻ってきた。話を聞いてみると、船乗りとは別れたのだという。それが、破局したという意味なのか、はたまた、死に分かれたのかは定かではないが、娘は、酷く打ちのめされていたらしい。
娘が帰ってきた事に、祖母は喜びつつも、そんな娘を心配し、あれこれと世話を焼いた。それも当然だろう。娘は身重なのに加え、日に日に衰弱していったのだから。
娘は、よく眠るようになった。それはもちろん、弱った身体が、休息を求めたのもあるのだろう。けれど、娘は自ら望んで眠っていたのも事実だった。夢で、あの人に会える、と、そう言っていたらしい。祖母は、何度か私にも相談に来ていたし、医者も私も、出来る事はしたが……あまり効果はなかった。
そうして、娘はとうとう、永遠の眠りについた。子を、身ごもったまま。祖母は大層嘆き、悲しんだが、当然娘が帰ってくるはずもなく、そのまま月日は流れていった。
そして、1月程経った、ある時、娘の墓参りに来た祖母は異変に気付く。
墓の中から、赤子の泣き声が聞こえたのだ。慌てて人を呼び、墓を掘り返してみると、そこには痩せた若草色の髪の赤子が泣いており、収められているはずの、娘の遺体は忽然と姿を消していた。
そんな経緯だ。消えた遺体も含め、赤子を気味悪がる者は多かったし……過激な意見も、出た。けれどもそれは倫理的に許されぬ事であるし、それをすれば、災いが降りかかる、と占術の結果も出たため、祖母が希望した通り、赤子は祖母に引き取られることになった。彼女は赤子を、普通の子のように、慈しんでいたよ。……3年後、祖母が家の中で倒れ、そのまま亡くなる時まで。
彼女はあの時点でいつお迎えがきてもおかしくない程の高齢だったし、彼女が亡くなった際、特に不審な点もなかった。だが、家の中、というのが良くなかったのだろう。祖母が亡くなったのは、幼子のせいだ。幼子が祖母を襲い、殺したのだ、という噂が流れた。
「――生まれに、人とは違う瞳、そして噂。これらによって、幼子の扱いが、腫れものを触るようなものになってしまっていたのは事実だ。立場上、特定の人物を特別扱いする訳にはいかなかったため、時折見守るだけになってしまった事は、すまないと思っているよ」
(……実際のところは、腫れもの扱い、なんて生温いものではなかったようですけどね)
ムンバキ・ポンの言葉に、胸中でのみ、呟いてから、柚葉は、オーアとリーベの方を見る。
「……オーアちゃん、どう見る?」
「んー……確定は確定だけど……どっちだろーな」
「そうなのよねぇ。まぁ、どっちにしても今、こっちにいるのは間違いないんだから、どっちでも同じと言えば同じだけど……。でも、先天性で、サキュインキュみたいな夢魔の特性を持ってる悪魔じゃない、純粋な夢魔の半魔なんて珍しいとは思っていたけど、レアパターンもレアパターンだったわね。納得したけど。道理で魔に近い訳だわ」
完全に考察モードに入っている2人に、柚葉は苦笑する。ムンバキ・ポンの相手――追加の情報収集――は任せた、という事だ。自分にならば任せても問題ないという信頼は、悪い気はしない。故に柚葉は、ムンバキ・ポンへと視線を戻すと、軽く頭を下げてみせた。
「お話、ありがとうございました。更に不躾で申し訳ないのですけれど、もう1つ、お尋ねしても、よろしいかしら?」
そう言って、話の中の祖母や幼子が暮らしていた家の場所を聞き出そうとした、その時だった。パーティ会話を通じて、緊迫した声が、3人の脳裏に響いたのは。
*******
時は、少し遡る。
オーア達を見送った後、レンとエドアルトは、宿の食堂に居残っていた。泊まっている部屋よりも、こちらの方が合流も、不測の事態が発生した時の対処もしやすいだろう、という判断だ。
席代として、追加で飲み物を注文したため、2人の目の前には、透明なグラスに注がれたアイスコーヒーが鎮座していた。黒い液体の中、ぷかぷかと浮かぶ氷を、意味もなくストローで突いていたレンだったが、ふと、手を止めると、くぁ、と小さく欠伸を零す。
「……大丈夫か?」
「ん?」
顔を上げ、不思議そうな表情で首を傾げたレンに、エドアルトは苦笑する。
「寝てないんだろう? やはり、眠いんじゃないのか?」
心配の色を滲ませた問いかけに、合点がいったらしく、あぁ、と声を漏らしてレンは笑う。
「大丈夫だよ。今は完全にそれはカットしてるから。ただ……ちょっと、退屈で、つい。……そんな呑気な事感じてる場合じゃないってのは、分かってるんだけど」
ちょっと申し訳なさそうに、首を竦める少年に、エドアルトは微笑する。
「いや、良いんじゃないか。ずっと気を張り詰めすぎたら、肝心な所で支障が出てくるかもしれないだろう? 今は待機中だ。ある程度気を抜いていてもいいし、実際、やる事がなくて退屈なのは分かる」
眦を和らげ、言うエドアルトにつられるように、ふっと、レンの表情も緩む。
「ん。……そうだね」
そう呟くように口にして、レンはストローを銜え、少しだけ、薄くなったコーヒーを飲む。その様子をなんとなしに眺めながら、エドアルトはふと、口を開いた。
「君は……固形物は受け付けないのかい?」
「へ?」
思わず赤の瞳をまん丸にしたレンに、エドアルトは言う。
「昨夜は疲れたから食事はいらないと言ってすぐに休んでしまったし、朝食だって、ジュースのみで済ませていただろう?」
言われて気付く。確かに、彼らの前でまともに物を食べてないな、と。故に、苦笑を浮かべ、レンは頬を掻いた。
「別に、そういう訳じゃないよ。ちゃんと食べれる。……ただ、ホントに少しづつしか食べれないし、食べなくても平気だから、ついね。あ。だからって、今から何か頼むのはなしだからね!? 一応席代として、これ、頼んだけど、正直さっきの飲み物でお腹いっぱいなんだからっ」
ひと口も飲まないのは逆に失礼だから、味見程度には飲んでるけど、と言うレンの言葉通り、レンの前に置かれたグラスの中身は殆どその量を減らしていない。普通の人であれば、到底健康を維持できないであろう飲食量に、なるほど、と思う。半分人ではないというのは、こういう事なのか、と。
「そういえばさ、エドアルトさんとオーアさんって、何かあったの? 最初、オーアさんが何か、苦手そうにしてたからさ。ちょっと気になって」
まぁ、暇つぶしに近いものだから、無理に聞こうとは思ってないけど、と言う若草色の髪の少年に、エドアルトは小さく笑う。
「大した事ではないよ。ただ……そうだね。若い時、子供の時の失敗は、よくよく印象に残ってしまう、という事かな」
俺も、あれは忘れられそうにないしね、と口にすると、レンは、ぱちりと目を瞬かせた。そんなレンに、エドアルトは問いかける。
「気になるかい?」
「そりゃね。気になるから聞いた訳だし」
もしもこの場に、オーアが居たら妨害しただろうが、レンにとっては幸運な、オーアにとっては不運な事に、この場にはレンとエドアルトしか居ない。故に、止める者は誰もおらず――
「いいよ。待ってる間の、暇つぶしにはなるだろう」
エドアルトは、小さな苦笑を浮かべ、口を開いた。
まだ、俺が経験の浅いクルセイダーだった頃の話だよ。
職の関係上、クルセイダーは、施設の警備や護衛任務が入りやすい。もちろん、討伐任務が入る事もあるけどね。
そんな訳で、俺に回ってきたのは、プロンテラにある孤児院の夜間警護任務だった。まぁ、言い方は悪いけど、孤児院だからね、警護対象としてはそれ程重要じゃないし、何かあるとしても、勝手に院を抜け出そうとするやんちゃな子を止めるのが主だ。……まぁ、不審者とかが入り込もうとした事もあるんだけどね。新人に、警護任務の経験を積ませるには丁度良い施設の1つなんだよ。
俺は好きだけどね、孤児院の警護任務。昼間とか、色々聞こえてきたりするのが、微笑ましいし、平和を感じる事が出来て……と、すまない、話が逸れたね。
その当時、俺は新人で……間の悪いことに、少し、夜の孤児院警護に慣れてきた頃だった。いつも、何もない事にね。有り体に言えば、油断していたんだ。同じ任を受けた同期と、とりとめのない話をしていたら、小さな子供が飛び出していったんだ。驚いたよ。そんなことは初めてだったからね。だから、少し、反応が遅れて……その場で捕まえる事が出来なかったんだ。と、同時くらいに、金色、って叫びながら、もう1人、さっきの子よりも少し大きい子供が飛び出してきた。そっちの子は同期が泊めてね、俺は飛び出してった子を追いかけたんだ。それが、オーアだよ。金色っていうのは、当時のあの子のあだ名、みたいなものかな。孤児院に慣れて、心を開いてくれるまでは、名前も教えてくれなかったらしくてね、最初はそう呼ばれてたらしい。
これは、後から聞いた話だけど、なかなか心を開いてくれないあの子に、同じ孤児院の子が焦れて、何か面白い、ドキドキする事でもしたら、仲良くなれると思って、肝試しに連れ出したらしい。あの子は、ニブルで保護された子だったから、良かれと思った事なのは分かるけど……トラウマというか、その時の事を、フラッシュバックさせちゃったんだね。結果、パニックになって、がむしゃらに逃げ出した、という訳だ。
……で、だ。そんな、パニックになって、捕まったら殺されるかのような、尋常じゃない様子で、夜の街を逃げる子供と、それを追いかける俺。……うん。何も知らずに傍から見たら、完全に事案だよね。あの時は、本当に間が悪かったんだ。まだ騎士団に入って日が浅かったから、任務の関係とかもあって、まだ、先輩達全員とは顔合わせが済んでなくて……その時、街の巡回任務をしていた先輩達が正にそれだった訳で…………うん、俺も追いかけられる事になった。
まぁ、あの子が孤児院の子で、俺が孤児院の警護についてる事は簡単に分かる事だから、すぐに誤解は解けたけど。
「――今は、もう笑い話かな」
苦笑してそう言ってから、エドアルトは、あぁそうだ、と付け加える。
「今の話だけど、オーアの前では話題に出さないであげてくれないかな。まだまだ、オーアの中では黒歴史のようだから」
話しておいて、なんだけどね、と言うエドアルトに、レンは軽く肩を竦めた。
「別に、わざわざ言われなくても」
普通の会話してたら、そんなの話題になる事なんてないでしょ、とレンがそんな素直ではない了承を返した、その時だった。
バタン、と食堂の戸が音を立て、レンとエドアルトは揃って、そちらを見る。やってきたのは、白衣を着た、金の髪の人物だった。
「おや、診察希望かい?」
「はい?」
そうしてかけられた問いに、訝し気な声を返せば、なんだ違うのか、と白衣の人物は息を吐く。
「私は医者でね、定期的にここには往診に来ているんだ」
「往診?」
「そう。この街にも病院はあるんだが、街外れといって良い所でね。住んでいる場所によっては、ちょっと遠くて行きにくい、という訳で、定期的に、ここに来ているんだ。ここは、大体街の真ん中だからね」
その言葉に、なるほど、と納得する。白衣の人物は、そこが定位置なのか、慣れた様子で、2人のすぐ近くの席に腰を下ろすと、仕事用具が入っているらしい鞄の中を確認し始める。
そんな時だった。
「っ! ドクター! 急患です!!」
外から聞こえてきた叫び声に、ガタッと音を立て、白衣の人物は立ち上がった。と、同時に外から聞こえてきたのは、レンやエドアルトには聞き覚えのない名称だ。
「ち、それに噛まれたのかっ」
焦りの含んだ声で舌打ちし、そう呟いてから、白衣の人物はレン達の方を見る。
「すまない。手を貸してもらえないか」
「何?」
端的に問いかけたレンに、白衣の人物は口を開く。
「この辺りの固有種である毒蛇に噛まれた人が出た。これは緑ポーション系が効かない、血清が必要なタイプの毒なんだが、今はまだ、出る時期じゃないから、病院に仕舞い込まれたままなんだ。探すのと、他の必要なものを持ってくるのに人手が欲しい」
口早にそう言われ、レンとエドアルトは頷く。緊急事態だ。否はなかった。
「すいませんっ!! 誰か手を貸してくださいっ」
次いで外から、そんな声が響く。
「向こうも人手が要るか。――君は向こうを手伝ってくれ。毒の巡りを遅くするのも重要だ。方法は彼女が知ってる」
エドアルトを見、言われた言葉に、彼は了承の言葉を返す。患者を運ぶにしろ、押さえるにしろ、処置するにしろ、力があった方が良いのは明白だ。となると確かに、適任なのはエドアルトの方である。
故に、エドアルトは、一足先に、宿の外へと飛び出した。そこには、倒れ呻く男性と、そのすぐ傍で膝をつく女性の姿があった。
「何か手伝うことはっ?」
声を上げたエドアルトに、女性がパッと顔を上げる。ありがとうございます、と礼を口にし、女性は、自身も手を動かしつつも、てきぱきと指示をする。それに従って、毒の巡りを遅くするため必要な個所を縛り、日陰へと運び、安静にさせる。そういうしていると、バタン、と音を立てて、宿の扉が開かれた。
「ドクター!! 遅いですっ!!」
宿から出てきた人物に、女性はそう声を上げた。
「無茶を言わないでくださいっ! アレの多発時期はまだ先な上に、噛まれた人が出たのは、病院が閉鎖されてから、初めてなんですから! それに、2階の窓から指示は出したでしょうっ」
そう返して駆けてくる男性は、確かに、白衣を纏っていた。
確かに、金色の髪をしていた。
けれど、エドアルトとレンが食堂で会った人物ではなかった。
その事実に、ひゅっと息を呑む。脳裏を過ぎったのは、昨日のロデルの言葉。
――中には、人間に化ける狡賢い悪霊もいてな
ザッと、血の気が下がる心地がした。
『っ、レン!!』
反射的に、冒険者証を通じて、パーティ会話で声を送る。
実は、医者が2人いたとか、そんな平和な落ちなら良い。が、そうはならない事をエドアルトは既に理解していた。だって、思い出せないのだ。あの人物が、白衣を着ていた事は覚えている。金色の髪をしていた事も、覚えている。あのドクターと呼ばれた男性とは別の姿をしていた事も分かる。それなのに、あの白衣の人物がどういった顔立ちだったのか、そもそも、男性だったのか、女性だったのか、それさえも思い出せなかった。それを、異常と言わずに、何と言うのだ。
『どしたっ?!』
ただならぬ声に、何かあったのだと察したオーアが叫ぶように、問いかけてくる。
『っ、すまない。やられた――っ!』
エドアルトのその声に、オーアはザッと顔色を変えると、反射的にその身を翻し、駆け出した。後ろから、オーアちゃん! と声が聞こえた。が、ムンバキ・ポンへの対応は、リーベが、柚葉が、やっておいてくれるだろうという、甘えと信頼があった。パーティ会話で、何が起きたのか、聞きながら、走る。
その間にも、レンの声が入る事はなく、今現在、会話が出来ないような状態に陥っている事は間違いない。その事実に舌打ちが漏れた。とにかく、エドアルトと、合流しなければ、と自身に支援魔法をかけ直し、走る速度を上げる。
と、その時だった。
「うわっ」
どんっ、と誰かにぶつかり、オーアがよろめく。パーティ会話の方に意識が傾いていて、注意力が散漫していた。
「悪いっ」
そう言うと同時に、顔を上げ、オーアは目を丸くした。
オーアとはまた違った金の髪に、深緑の瞳のギロチンクロス。その姿は、オーアがよく知るものだったからだ。
「ヴァレリー!?」
思わず驚いた声を上げたオーアに、ヴァレリーも目を丸くし、オーアを見る。
「オーア? びっくりした。こんなとこで会うと思――っ、わっ」
ヴァレリーの言葉を遮るように、バッとオーアは、ヴァレリーの腕を掴むと、声を上げた。
「ヴァレリー、悪いっ! 手を貸してほしい!!」
相手の都合も聞かずに、いきなりそんな事をオーアが頼んでくるのは珍しい。普段であれば、暇なら、とか、手が空いてるなら、とか聞いた上で言うはずだ。故に何かあったのは明白で、ヴァレリーは、ぽんっとオーアの頭を軽く叩く。
「ん、りょーかい。その代わり、次、一緒に飲みに行くときはオーアの奢りな?」
「っ、ありがとう!」
*******
始めに、レンが違和感を感じたのは、連れられるがまま、ジプニーに乗って、街の南東まで来た時だ。
ポートマラヤで、普通に使われているらしい、この移動サービスを使えば、病院から遠くに住んでいる人でも、特に苦も無く、時間もかからず、来れるように思えた。ならば、わざわざ、旅館にまできて、往診する必要はあるのだろうか、と。そう思ったのだ。
それが、まずい、という思いに変わったのは、その建物を見た時だった。まだ、真新しいように見える2階建ての、他の家と比べても大きな建物。それを見た瞬間、ざわり、と肌が泡立った。
ここは、まずい、そう思った。そして、その建物へと、平然と向かおうとしている、隣の人物も、まずいのではないか、と。
この、まずい、は、何も気づかず、何も感じずに向かおうとしているなら、この人も危ない、という意味と、もし、分かっていて、あんな場所に連れて行こうとしているのなら、この人と一緒にいるのはまずい、という意味の両方だった、
故に、迷った。後者ならば、即ハエで逃げなければならない事態だが、もしも、前者であるなら、逃げてしまった場合、隣の人物とそして血清を待っている人をも、見殺すことになりかねない。
故に躊躇した。建物の目前で、つい、レンは足を止めてしまった。
それが、失敗だった。
がしり。
突然、腕を掴まれる。
ソレの手がレンに触れた刹那、ぞわっと総毛だった。ザッと血の気が下がり、心臓がきゅうっと絞めつけられたかのような心地がした。直感的に悟る。これは、ソレがまずい奴だと。
咄嗟に手を振りほどこうとするが、ギリギリと痛いほどに強く掴まれた手は外れない。
「っ、離せっ!!」
掴まれた腕と引き、足を踏ん張り、抵抗するレンを意に介さず、そちらを見る事すらせず、淡々とソレは進んでいく。ざりざりと、靴底と砂利が擦れ、音を立てるのが、嫌に耳についた。
「離せ! 離せってばっっ!!」
抵抗するも、そう長くはない距離だ。あっという間に建物の扉が目前にまで迫る。刹那、音を立てて、扉が開いた。その先に広がる空間はやけに暗く、ざわりと肌を撫でる禍々しい気配は、最初に建物を見て感じた時の比ではない。ひゅっと、レンが息を呑んだ。次の瞬間、どんっと思い切り突き飛ばされる。
「っ!!」
その衝撃で、建物の敷居を踏み越え、膝をつく。ギ、と木製の床がきしんだ音を立てた。
次いで、レンが体勢を立て直すよりも早く、バンッ、と背後から、扉の閉まる音が響く。
暗い。
外が明るかったせいもあるのだろうが、やはり、妙に暗かった。
じとり、と重く暗い不快な空気。つい、ルキナは、ここ、絶対に来させられないなと、思ったところで、この空気の正体に気付く。これは、瘴気だ。グラストヘイムやニブルなら分かるが、こんな街中であってはならないものである。反射的に顔を上げて、レンは、ひゅっと息を呑んだ。少し離れた所から、こちらを見る、目、目、目。それは、今まで見た事のない魔物達だった。
継ぎはぎのある古びたローブを纏い、フードを被り、白い大きく不気味なぬいぐるみのようなものを背負った老人のような姿の魔物。宙に飛んでいるのは、巨大な蝙蝠の羽を背に生やした上半身だけの女性型の魔物で、大きな注射器のような物を抱えていた。物陰からこちらをじっと見るのは、オークベイビーをガリガリに痩せさせ、肌を黒く染めたかのような魔物だった。どれもこれも、自分の知識にはない魔物だ。けれど、それらの発する禍々しさから、今の自分では、到底敵わない事を直感的に理解する。
瞬間的に、逃げなければ、と思考が走る。けれど、建物内に入ってしまった以上、ハエの羽でここから外に出る事は出来ない。乱数転移先が壁の中になるような事故が起きないように、また、防犯上の理由もあり、全ての建物には、外と中の空間を区別する術式が刻まれているし、そもそも建物によっては、乱数転移自体が使えないよう術式が組まれている所もある。けれど、だからといって、蝶の羽は論外だ。何のために自分が、ここに来たと思っているという話だ。出発した時よりも深く絡みつかれた状態で、あの子がいる地になど、飛べるわけがない。瞬きの間でそこまで考え、ふと、レンは気付く。じっと、こちらを見る魔物達が、こちらを認識しつつも、襲っては来ない事に。ノンアクティブに類する魔物か。そう考えるが、すぐにそれは否定する。こちらを見るその目はどれもこれも、害意と悪意に満ちている。許されたなら、すぐにでも襲い掛かった来るだろう。そこで、レンは疑問に思う。
許されたなら? ……誰に?
その刹那、かつん、と足音が響く。
かつん、かつん、と歩み、レンの横へと立ったそれを見上げ、レンは認識する。
その人物が女性であった事に。くすんだ金色の髪が長い事に。纏っていたのは白衣ではなく、古びた白のワンピースであった事に。
それは、レンを見下ろし、淀んだ赤黒い瞳を細め、笑うと、レンへと手を差し出した。
「は?」
何のつもりだと、声を漏らせば、女性の姿をしたそれは、歪んだ笑みを浮かべたまま、口を開く。
「おいで、かわいい子」
そう言ってから、それは軽く首を傾げる。
「……私と一緒じゃないと、他の子達に虐められるんじゃないかしら?」
「っ」
つまり、ここにいる魔物に襲われたくなければ、手を取れ、という事だ。
オーアに協力してもらい、ある程度の対抗手段は有しているが、あれは、下準備がいるし、そもそも、これだけの数に一斉に襲い掛かられたらひとたまりもない。故に、小さく舌打ちを漏らし、渋々、それの手を取る。手に触れた瞬間、ぞわりと駆け抜けていく悪寒と不快感を、ぐ、と耐える。
その時だった。
『っ、レン!!』
冒険者証を通じ、聞こえてきた声にはっとする。冒険者証、パーティ会話。忘れていた。
この辺りは、"俺"の頃からパーティを組む経験が少なかった事が仇になった。幸い、冒険者証を取り上げられてはいない。今の状況を伝えようとした、その瞬間。
「痛っ!」
思わず声を漏らしてしまう程に強く、ギリギリと、手を握りしめられる。
「かわいい子。私、ないしょ話は嫌いだわ」
つまり、連絡を取るのは許さない、という事だ。その言葉に、舌打ちが漏れると同時に、それを察知された事にレンは驚いた。耳打ちやパーティ会話などの遠隔会話は、魔力を使って行われるため、確かに、察知することは不可能ではないだろう。けれど、それに使われる魔力は、極々微量で、そんな僅かな魔力の揺らぎを察知するというのは、早々出来る事ではない。
(……もしくは、俺が、侵蝕を受けてるから、察知されてる可能性か……こっちのが、可能性高そうだな)
そう思うが、どちらにせよ、この状況では、とりあえず、相手の要求に従うしかなさそうだった。1つ、溜息をつき、レンは冒険者証を外すと、床へと落とす。小さな音を立てて落ちたそれを一瞥してから、レンは口を開いた。
「……これでいい?」
レンの言葉と行動に、ソレは満足げな微笑を浮かべる。
「いい子ね。かわいい子」
(……ジプニーの運転手は、病院まで、と言われてここまで送ってくれた。他にそれっぽい建物はなかったと思う。なら、ここが、病院である可能性は高い。何でこうなってるのかって話ではあるけど! でも、そうであるならば、エドアルトさん達がここに辿り着くまで、そう時間はかからないはず。で、入口に、俺の冒険者証が落ちていれば、俺がここにいるという証明になる。なら、俺は、皆が車で、どんな手を使ってでも、時間を、稼ぐ)
ぐっと、歯を食いしばり、ソレに手を引かれるがまま、レンは素直に足を進める。 従順に見えるその態度に、それは笑い声を零した。
「ふふっ。おかえり、かわいい子」
その言葉に、レンは心の中で舌を出した。絶対に、ただいまなんて、言ってやらない、と。自分の帰る場所は、ここではないのだから。
*******
「ドクター!」
「おや、昨日の。……どうかしましたか?」
宿へと辿り着き、エドアルトと合流するや否や、オーアは、ドクターブンへと詰め寄った。
「いくつか、聞きたい事がある」
「何でしょう?」
「――病院について。この街にも、病院、あるんだって?」
オーアのその言葉に、一瞬、ドクターは息を呑む。けれど、何事もなかったかのように笑みを作り、彼は口を開いた。
「――えぇ。けれど、少し前に、事故がありまして。今は閉鎖されているんです。それで、私はここで患者を診ている訳です」
「事故って?」
「それは……ちょっと。部外者に話す訳にはいかないので」
困ったように、言うドクターに、オーアは1つ息をついて見せた。
「まー、個人情報とか、守秘義務とか、そーゆーの、ありそうだもんなぁ」
「えぇ、そのような感じです」
(……その通り、とかじゃなくって、そのような感じ、ね。つまり、近いけど違うって事だ)
一見、すんなり引いてくれそうな気配に、ドクターは、ほっと息をつく。そんなドクターに、ちなみにさぁ、と何てことないように、オーアは口を開いた。
「昨日の夜、ちょっとお喋りした時に、悪霊に遭うより怖い目にあった、って言ってたじゃん? それって、病院での事、だったりしない? てか、事故っていうのが、そうなんじゃねーかな、って思ってるんだけど?」
「っ! それは……っ、どうして」
はっきりと変わった顔色は、オーアの言葉が図星だと示していて、思わず、オーアは拳を握る。
「っしゃ! ブラフの可能性が下がったっ」
「は?」
唐突な言葉に、ドクターは呆気にとられた声を漏らす。が、そんな様子になど気にも留めずにオーアは口を開いた。
「ドクター。ついさっき、俺の仲間が攫われた。十中八九、ソウイウモノに、だ。ドクターに化けて病院へ連れ出したらしい。口からでまかせの可能性も考えたけど、ドクターのその様子を見るに、病院は今、そーゆー危険なモノがいてもおかしくない状況になってる、って思って良さそうだ。そんな訳で、仲間を助けに病院に行く。これは、ドクターから話を聞けても、聞けなくても変わらない。けど、出来るだけ情報はあった方がいい。だから、話せる事があったら、教えて欲しいんだ」
一転して、真剣な表情で言葉を紡ぐオーアに、ドクターは、数秒、間を置いてから、深々と息を吐きだした。
「……分かりました。行くのなら、嫌でも目にするはずですし、私が知っている事は話しましょう。けれど、残念ですが、その方は諦めた方が良いかと」
「それは、こっちが判断する。ってか、あいつも冒険者だし、ある程度の対抗手段は持ってるからな。時間稼ぎくらいは出来る」
きっぱりと、そう言い切ったオーアからは、仲間への信頼が感じられ、ドクターは小さく、ほっと息をつく。
「そう、でしたね。すみません。それで、何を聞きたいのですが?」
「病院の現状。事故で何が起きたのか。事故が起きる前に予兆、というか何か変わったことはなかったか。だな」
つらつらと淀みなく紡がれた言葉に、ドクターはそうですね、と言葉を探すように、軽く目を伏せる。
「まず……病院の現状ですが、何も変わっていなければ、魔物の巣になっているかと。街の指導者とシャーマンのおかげで、それらが病院の外に出てくる事はありません。ので、病院を閉鎖させるだけで済んでいる状態ですね。だからこそ、このことは街の人も知っているのは一部です」
下手に広めると、パニックになりかねませんし、と口にしてから、ドクターは続けて言葉を紡ぐ。
「事故について、ですが……正直なところ、何が起きたのかは、分かっていません。だからこそ、事故、としか表現出来ないんです。ただ、分かるのは、あの日、突然、病院の至る所に、見た事もない魔物が現れ、その時、病院の中に居た人間は、皆、死に物狂いで逃げ出した、という事だけです。……2階に居た、入院患者を見捨ててね」
「っ!」
思わず目を見開くオーアに、ドクターは自嘲する。
「患者の命を預かる医者にあるまじき行為だったと、思っているよ」
無意識に敬語の外れたそれは、彼の嘘偽りのない本音なのだろう。それが分かるからこそ、言っても詮のない事だし、相手もそんなものを望んではない事を理解しつつも、オーアはゆるゆると首を振った。
「それは……不可抗力、仕方のない事だ。先ずは自分自身を守んなきゃ、他の人を守るなんて出来ないし、ましてや、魔物が絡んでるんじゃ、自分の身を守れただけでも、十分……いや、んな事は分かってるよな。悪い。……ちなみにその時、どこから魔物が現れたか、どこに魔物が多くいたか、見る、もしくは話してる人は居なかったか? 信憑性はなくてもいい」
その問いに、いえ、特には、と言いかけ、ふと、ドクターは考え込む。
少しの間を置いて、そういえば、と言葉を紡いだ。
「看護師の1人が、2階から、魔物がなだれ込んできた、と言ってましたね」
「……なるほど。んじゃ、最後。事故が起きる前に、何かなかったか?」
その言葉に、ドクターは沈黙する。ややあって、迷ったように、ぎこちなく、口を開いた。
「……あったと言えばあったし、なかったと言えばなかった、そんな感じですね」
「んん?」
首を傾げたオーアに、ドクターは言葉を紡ぐ。
「それは、事故が起こる少し前などではなく……病院が、設立された時から、ずっと、だったんです。初め、病院が出来た時は、街の皆が喜んでくれていました。これで、大きな病院のある街まで行かなくても、治療が受けられるようになる、と。けれど、どういう訳か、病院で治療を受けてたにも関わらず、良くなるどころか、逆に悪化する患者がいたのです。それも、何人も。その人達は、皆、軽い風邪や腹痛など、最初は何てことのない軽い症状で、すぐに良くなる見立てでした。ですが、原因不明の悪化が続き……入院患者は皆、そうして入院した人達でした。そのため、病院がおかしいのだと、声を上げた人もいました。街の古木を切って、病院を建築したのが良くなかったに違いない、と。気持ちは分かります。私達も、どうして薬が効かないのか。どうして、病状が、明らかに不自然に悪化するのか、全く、原因が分からなかったのですから。そうして、何人も、助ける事が、出来なかったのですから……っ」
悔し気に拳を握りしめ、吐露してから、ドクターはハッとする。失礼、と口にしてから、何か思い出したのか、そういえば、と、声を零した。
「入院患者の方から、睡眠薬を処方してくれるよう、頼まれる事が多かったですね。悪夢を見るから、夢を見ないくらい、深く眠れる薬が欲しい、と。悪夢を見ると、睡眠薬が欲しいと、そう言わない人も、夜の見回りで、魘されている事もありました。……関係があるかは分かりませんが、私が知っているのは、こんな所ですね」
「なるほど……さんきゅ、助かった」
「いえ、そちらも、気を付けて」
ドクターの言葉に、おぅ、と返して、オーアは背を向ける。と、その時、あ、とドクターの声が響き、オーアは、踏み出しかけた足を止める。
「どした?」
「確定ではないのですが、向こうで、もし、看護師に会いましたら、よろしくお願いしますと、お伝えください」
「……看護師?」
ドクターの言葉に、オーアは訝し気な顔をする。今聞いた話を踏まえれば、人がいるかもしれないというのは、おかしな話だからだ。そんなオーアに、ドクターは軽く頷く。
「えぇ、新任の看護師です。病院をどうにかするために、街の指導者や本部に掛け合って、ようやく派遣してもらったんです。本当は、最初に私の所まで来るはずなのですが、もう、いつ来ても良い頃合いになっても来ないので、直接病院へ行ったのかも、と思いまして」
という事は、ただの、普通の看護師ではないのだろう。そういう事ならば納得だ。故にオーアは頷いてみせる。
「なるほど。ん、分かった。教えてくれてありがとな」
そう言って、オーアは今度こそ、ドクターブンに背を向けると、少し離れた所で待機していた仲間の元へと駆け寄った。元々宿で待機していたエドアルト、オーアと共に来たヴァレリーに加えて、柚葉とリーベも既に合流しており、レンを除いた全員が、この場に揃っていた。
「お待たせ! 話、聞こえてたか?」
皆の元へ、駆け寄るや否や、そう問いかけたオーアに、リーベはぐっ、と、いい笑顔を浮かべる。
「えぇ。丁度、ドクターさんが病院の現状を話し始めてくれた辺りで合流できたから、ばっちり聞いてたわ。オーアちゃんも、聞こえてたと思うけど、パーティ会話で、ヴァレリーくんとの自己紹介と出来る事のすり合わせは完了したから、こっちの準備はOKよ」
リーベの言葉に、オーアは1つ頷く。
オーアがドクターから話を聞いてる裏で、そんな会話があったのは、当然聞こえていた。会話に混ざる事も容易ではあったが、オーアの戦闘スタイルは、リーベ達もヴァレリーも既に把握している事だ。故に、特に何か言う必要なないだろうと判断し、ドクターとの情報収集に専念していた訳である。
「ヴァレリーも、巻き込んで悪い。けど、手、貸してくれて、ホントありがとな」
リーベからヴァレリーへと視線を移し、笑いかけたオーアに、ヴァレリーも笑みを返す。
「気にすんなって、さっき言った通り、しっかりお礼はもらうしな」
そんな軽口に、お手柔らかにと軽口を返してから、オーアはすっと、表情を真剣なものへと塗り替えた。
「んじゃ、行くか」
be continued
あとがき
……病院にたどり着くまでいかなかったっ!orz
いや。ここで切らないと、さすがに長くなりすぎると判断したから、しゃーないんだけど、うん。あと、まぁ、基本、情報収集のターンだったから、お話ばっかりだったのも……んー、反省点ではある。ぶっちゃけ、話の流れ上、今の私には改善出来ないけど! ……やっぱ、要精進ですなぁ
まぁ、何はともあれ、次から本格的に、病院クエが始まるので頑張る。
この話の最初の方で、レンが言ってたおびき寄せ。リーベさんからは何無茶な的な反応だったけど、実は、割と理にかなってたり。情報収集で無駄に労力使わずに済むし、オーアが見抜くので、実際来ても不意打ちは防げる……どころか、騙された振りしての奇襲が可能だからね。相手が対処出来る力量ならば。でも、実際は、根本的なLv不足で詰むので、理にはかなってたけど、2人では無理だったって感じですなー。
朝食会議、フラグはいっぱい立ってました。オーアと柚葉さんは自分の直感力をもうちょっと信用した方が良いと思うの。柚葉さん、視えた事に対しては、信用置いてるけど、何気なしに思った事は、そのまま流しちゃうからなー。オーアはそもそも無自覚。まぁ、オーアの場合、対象が、限定的だから、無自覚&周りも気付いてないのでしゃーない、とも言える。
レンの出自は、実は、呼び声書き始めてから、考えたものだったり。いや、ポートマラヤ出身で、身寄りが無く、記憶を取り戻すまで迫害されて生きてきた、ってのは、元からあった(からこそ、ポートマラヤネタが出来た)んだけど、赤ちゃんの時とか、どうしたって人の手が必要な頃はどうしてたのかとか、うちの生まれ変わり含む転生設定だと、レン、アルデバラン出身になるはずだったんだけど、どうしてポートマラヤにいるのか、とか、その辺をちゃんと煮詰めたのが今回の出自話でする。若干怪談風味になったのは仕様ですな。
エドアルトさんとの思い出話は、実は、3人が街長の所で何を聞いてるか、察してたからこそ、話してくれた所がありそうだなーって勝手に思ってたりする。暇つぶしも兼ねてるけどね。
エドアルトさんは、この出来事がオーアの黒歴史だと思ってるケド、オーアにとっては、オーアの名前を貰う前の全てが抹消したい過去なので、この出来事が黒歴史なのではなく、この出来事”も”黒歴史なのである。ちなみに、これは、エドアルトさんがオーアを金色時代から知ってるなら、孤児院の子の1人じゃなくって、オーアをオーアと認識する何かがあったんだろーなぁ、とぽやぽやして浮かんだものだったり。もし、ちゃんとこの時の出来事を書く機会があったら、オーア視点で書いてみたい気はするw
……実は、リーベとオーアの出会いって、オーアがオーアになった後、変わりたいと奮闘し始めた頃だから、出会い自体はリーベよりもエドアルトさんのが早かった事に……w 交流頻度ではリーベさんの方が上だけどね!!
ちなみに、もし、この話をエドアルトさんが、レンにしたと知ったらオーア、「これだから、クルセ系はぁぁぁぁっっ!!」と全力で叫びそう。クルセ系に対する熱い風評被害です(笑)
2話目のドクターブンとの会話は、3話でのヒントでした。キャラへというより、読者へのヒントだけどね。出張開業、往診、仕事中の口調、この辺りで、読んでて、ん?、って違和感を感じて貰えれば嬉しいな。
で、だ。
……騒ぎと、エドアルトさんの役どころに関しては、本当に申し訳ないと思ってまする……orz。
ここは、本気で悩んだ。レンを1人にして、病院に連れ出すのは必須条件だったので……。ここ、敵さんが失敗しちゃうと、隙見ての実力行使か、レン完全操られの失踪だから、残せるヒントが少なくなる上に、レンが抵抗できなくなるからね。敵さんも完全にレンが手に入ったら、もう後はどうでもいい訳で、そうなるとBadEndルートに直行してしまう訳で、となると、どうしても、ここは、出し抜かれて欲しかったのです。
で、じゃあ、その役を誰に振るかとなった時、レンの出自を問いかけるのは柚葉で確定だったので、まず、彼女が除外。この人、実は一応、母親やってたりするので、レンの扱いに、内心、1番憤ってたからね。あと、名目が名目なので、お守り作成組のリーベも外せなかったんだ。オーアは、実は、待機に回そうと思えば回せた。言い出しっぺはオーアだけど、お守り作成の主導はリーベだったので、彼女さえ居れば、OKではあった……んだけど! もし、オーアが待機組になった場合……騙されてくれないんだよねぇぇ。特性上。そうなるとどうなったかというと……朝食会議であった、泳がそうとして2人揃って連れ去られルートに入ってました。となると、2人で即ボス戦。ヒント残せないし、オーアがいないので、ドクターブンとの会話が発生しない(ドクターが悪霊よりも怖い目にあった事があるって情報、他メンバーにないから、そこから突いて病院の情報出せない上に、そもそもこの場合だと、宿に戻ってきたら2人がいなかった&連絡通じない!って状態なので、何があったか、他メンバーはさっぱり分からないから、まず、病院ってキーすら出てこないから、町中しらみつぶしに探す事になる)ため、正規ルートで病院クエ入る=ショートカットが出来ない=合流に時間がかかる=ボス戦中、仲間が助けに入るのも難しい。……となると、詰みなんだな。ぶっちゃけ、暴露すると、敵さんの想定Lvはビョンウンゴよりは低いです。が、場所が場所なんで、それでも3次向けなLvなので、正攻法だと、オーアの実力じゃあ、まだ無理で、それより弱いレンは言うに及ばず……。となると、やっぱりオーアも待機組にはできなくて……
そんな訳で、エドアルトさんに、貧乏くじ引いて貰ってしまいました><。これに関しては、本当に悪かったと思ってる。
実は、最初の構想というか、2話に入るまで、待機はレンのみの予定だったんだ……でも、リーベに、「いや、護衛対象1人で放置はないでしょ」って、言われ、確かに、ってなってしまったため、あぁなったという裏話……。そのおかげで、会話ネタ増えたから、いっかと思ってたけど、こんな所に落とし穴があったとは……(単純に私がアホなだけともいう
ヴァレリーさんが、ポートマラヤにいたのは、都合の良い偶然です。でも、バリオに狩りに来たんだろーなー。一応うちの、ギロチンで試したけど、囲まれなきゃ普通に狩れたし。んでもって、いきなり手貸してくれ言われて了承してくれるヴァレリーさん、優しい。ありがとう(拝
ガチで、前衛、諸事情で2人必要なんでな!! ありがとうございます & お借りしました、るいさんありがとうございます(深々と拝む
ちなみに、ヴァレリーさんとレンが出会うのって、レンがクリエになってからなのは変わらないので……まぁ、そういう事ですな。
あと、相手の都合聞かずにry、とあったけど、それは相手がヴァレリーさんだから、珍しいだけだったり。クリム相手の場合は、聞く方が珍しい。まぁ、普通に言ったら、常にNoが返るからな、クリムの場合だと。一歩引いてたんじゃ、永遠に足踏み状態で距離が縮まらないと判断したが故のある意味特別扱い……。クリムは全力でいらないだろうけど(笑)
……これ、オーア、CP成立して、ヴァレリーさんに甘えるようになったら、もしかすると変わるかもなー。そういう甘えとワガママが許される、してもいいって、無意識のとこで実感したら、ヴァレリーさんも、問答無用で巻き込むようになるかも……まぁ、この時点から見れば、まだまだ先の話ですな。
情報収集は、クエではNPCが病院について口をつぐむのは、街のイメージを損なうからって、言ってたんだけど……まず、そも、警戒する街の状態で、既にイメージ損なってるだろ、と思った中の人だったり。
本当に事故なら、まーこういう理由でも、吹聴できないかなーと、推測で個人情報と守秘義務を、口をつぐむ理由に挙げてみた次第……あ、あと、病院閉鎖の直接的な原因というか、過程はねつ造ですのであしからず。ドクターのとこから、病院クエ開始してる時点で今更ともいうけどね!
あ、と、は……未来の私が読み返した時に、絶対突っ込むと思うから、自白しておこう。最後のシーン、本当は全員分何かしら描写入れるべきだったんだけど、逃げましたorz
仮にも護衛任務で失態した(あぁぁ、ホントにすいません、ごめんなさいぃぃぃ)直後のエドアルトさんがね、うん、書けなくてですね……イメージ出来ないってよりは、中の人がごめん寝状態になるからだな、うん。仮にも3次職。まだ取り返しのつく段階だし、意識の切り替えはきっちりしてそうだから、少なくても表面上は、しっかりしてるんじゃないかなーとは思ってる。後々、もしかしたら、加筆するかもしれない。
さーてさてはて。病院クエ、割と脳内構想ノンストップなんだよなー。でも、書きたいシーンいくつもあるので、頑張る。
使用素材: 篝火幻燈様 流水