陽の光が入らぬ、真っ暗な病院内。
その廊下に、青白い光が灯る。
周囲を照らしながら、光は、くるりくるりと、リーベの周りを回っていた。
その隣にはエドアルト。
ヴァレリーと柚葉を見送った後、2人は病院内を歩き進めていた。
当然、今まで同様、病院内の蠢く魔物達が襲いかかってくるが、エドアルトがリーベを守り、リーベはマグヌスエクソシズムで魔物達を殲滅する。
元々、共に戦う事も多い2人だ。当然、息も合っているし、マグヌスエクソシズムで倒せる相手しか居ない分、ここの方が楽かもしれないくらいだった。
そうやって、2人で進む中、ふと、エドアルトが口を開いた。
「そういえば、オーアから退魔班の試作品を渡されていたのだけど、リーベさんに預けて良いかい? 試作品、という事は、部外者があまり、長々と持っているのは良くないだろう?」
そう言って取り出された物を見て、リーベは目を見張る。
一拍、間を置いた後、深々と息を吐いて見せた。
「もう、オーアちゃんったら……ありがとう、エドアルトさん。聞けて良かったわ。エドアルトさんの言うとおりなのよね。だから、私がしっかり返しておくわ」
リーベの言葉に、小さくホッと息を吐いて、エドアルトは赤や黄のジェムストーンにしか見えない物を、リーベへと手渡す。
女性らしい、嫋やかな手がそれを受け取り、荷へと仕舞う。が、そのうちの1つを手の中に残し、戯れに弄ぶ。
「――ねぇ、エドアルトさん。エドアルトさんも、コレ、使った?」
持ってきてる、って事は、オーアちゃんは使ってると思うんだけど。
そう、敢えて軽い調子を意識してリーベは問いかける。それに返ってくるのは肯定だ。
「あぁ、2つ、使わせて貰ったな。――報告書用かい?」
「うん。そんなとこ。まぁ、書くの私じゃないけどねっ!」
にこっと笑って、そんな
「ここだね」
ぽっかりと大きく開いた扉。
その奥は、闇色で塗り潰され、ここからでは視認することが出来ない。
中に入るその前に、リーベは、ドア枠の隣、木製の壁を見る。
否、正確に言えば、見ているのは壁ではない。夢魔の魔力によって、そこに描かれていた魔法陣だ。
オーアによって壊され、もう、意味のなしていないそれ。本体も封印されたのならば、そのうち、消えてなくなるだろう。
逆を言えば、今ならば、まだ、その魔法陣を見ることが出来る、という事だ。
故に、まじまじと、それを検分し、リーベは深々とため息を落とす。
「ホント、こーゆーとこは、さすがとしか言い様がないわね、オーアちゃん。よくもまぁ、こんな
あの子が特殊なのは分かってるけど、と、心の中で付け加えてから、リーベはエドアルトを見上げる。
「エドアルトさんは、オーアちゃんがこの部屋を見つけて入るところ、見た?」
その問いかけに、エドアルトは頷き、思い返す。
レンを助けるため、別行動を宣言し、駆けていったオーアを追いかけたその時を。
***
真っ暗な廊下を走る。
光源が無いため、エドアルトの周囲は闇色だった。
けれど、むしろ、だからこそ、ルアフの青白い光を従えたオーアの姿は距離があっても非常に目立った。そこそこ離れていても、よく見えたのは、廊下が直線的だった事も大きな要因ではあるだろう。
闇の中、前を走るオーアの姿だけが、ぽぅ、と浮かび上がっているようだった。
走りながら、オーアは、時折、部屋に何かを投げ入れていた。
その腕の振り方から、何かを、出来るだけ遠くへと投げようとしているようだった。
今なら、それが退魔班の試作品だと分かるが、その時は、何をしているのか、全く見当もつかなかった。エドアルトがその部屋の前を通る時には、
けれど、それでも、真っ暗な闇の奥で、魔物が騒めき、蠢いているのは分かった。
走り抜けるエドアルトに、気付いていないのか、はたまた眼中になかったのか、それらがこちらへやってくる気配が、皆無だった事を、訝しくは思っていた。
けれど、それは、すぐに別の驚きで塗り替えられた。
急に、前を走っていたオーアが足を止める。オーアの周囲を、ルアフの光が青白く照らし出していたが、それは
なのに。
オーアが壁に手を叩き付ける。
刹那、オーアの眼前に、扉が現れた。壁にしか、見えなかったそこに。
突然の事にエドアルトは目を見開く。
その間に、オーアはその部屋の中へと、飛び込んでいった。
***
そんな情景を思い返し、リーベへと伝えれば、彼女は、ミルクティ色の瞳になんとも言えない感情を乗せる。
「エドアルトさんが、追いつく間もなく、って事は、ほぼほぼノータイムかぁ……って事は、確実に見えてたわよね、コレ……これを、視認出来た、とか……ホント、オーアちゃん、これで無自覚なんだもんなぁ……」
むしろ、だからこそ無自覚、なのかもだけど。
そう、深々と息を吐いてから、緩く頭を振り、リーベはエドアルトへと視線を戻す。
「教えてくれてありがとう、エドアルトさん。じゃあ、行きましょうか」
にこり、と笑みを作って礼を紡ぐと、リーベは部屋の中へと足を踏み入れる。
その後に続きつつ、エドアルトは口を開いた。
「今のは、どういう事なのか、聞いても良い話かい?」
部屋の中央へと足を進めつつ、リーベは顔だけで軽く振り返る。
「えぇ、大丈夫。役割分担の正しさを痛感した、ってだけの話だから」
そう言って、部屋の中央付近まで歩いた所で立ち止まり、リーベは、今度は体ごと振り返る。
その足下には、お札の貼られた木の心臓。
けれど、それを拾うことなく、リーベは後ろ手に手を組む。
「もし、私が
それを聞いて、エドアルトは少し沈黙した後、口を開く。
「……それは、隠すことが元から得意な相手が、本気で隠していたものに、オーアは一目で気がついた、という事だね」
「……そうね」
「…………だから、かい?」
「え?」
エドアルトの唐突な問いかけに、リーベはきょとんと目を瞬かせる。
小首を傾げたアークビショップに、エドアルトは確信を持って、言葉を紡ぐ。
「――だから、
リーベは、目を見開く。
「何を――」
「
「オーアちゃんには、使えるようになれば、転職水準には達してる、って伝えてあるわよ?」
「
行動を共にしていた時、オーアは時折、リーベへ羨望の混じった視線を向けていた。あれを見る限り、オーアが何かこだわりを持って、敢えてハイプリーストのままで居続けている事を選んでいるようには見えなかった。故に、そう紡いだエドアルトの言葉に、リーベは沈黙する。
そして、ややあって、苦笑いを浮かべた。
「あはは、さすがエドアルトさん。誤魔化されてくれないかー」
「リーベさん」
咎めるような声色で名を呼ばれ、リーベはバツが悪そうに頬を掻く。
エドアルトを見返し、1つ、頷いて見せた。
「うん。オーアちゃんの転職、出来るだけ先延ばしにしようとしたのは事実よ。……オーアちゃんがただの冒険者だったら、さっさと転職させたんだけどね」
軽く肩を竦めて、リーベは続きを紡ぐ。
「――オーアちゃんは、大聖堂の退魔班に所属してる冒険者だから。ハイプリーストとアークビショップじゃあ、振り分けられる任務の難易度が段違いだわ。無理な事も、私の自己満足の押しつけな事も分かってるんだけど……私、あの子には危ない事してほしくないの。出来るだけ。少しでも。……でもダメね。こうして、組織を介さない依頼だと、逆に危ない目に遭わせちゃったわ」
眉を下げ、申し訳なさの滲む顔で笑うリーベに、エドアルトはそっと問いかける。
「リーベさんは、オーアが冒険者になるのは反対だった?」
冒険者なんて、自由で危険な職の代名詞だ。
リーベの言葉を聞いていれば、当然抱くだろう問い。けれど、リーベは予想に反して首を横に振る。
「いいえ。それはないわ。むしろ、なってくれて良かったと思ってる。矛盾してるように聞こえるかもしれないけど、オーアちゃんは、自衛手段を持たない方が危ないから」
そう紡いでから、リーベは腰を折り、片手を伸ばして、足下に転がる木の心臓を拾い上げる。
手の中で弄び、検分し、しばし。
そして、1つ頷くと、リーベは顔を上げ、エドアルトへと視線を合わせる。
「うん。ちゃんとしっかり封印されてるから、大丈夫そう。ただ――」
そこで言葉を切り、リーベは辺りを見回す。
「オーアちゃんは大丈夫と判断したのかもしれないけど、ここに核を置いていくのは、ちょっと不安ね。この手のはテリトリーから離した方が良いし、何より、元からあった場所に放置だと、どうしたって不測の事態が発生しやすいもの」
まぁ、ならば、大聖堂での保管が安全なのかと言えば、絶対安全とも言えないのだけど。
そういった封印物が多く保管されているという事は、トラブルの種が一箇所に纏まっているという事でもあるので。けれども、管理監視されている分、一応、こちらの方が安全のはずである。
そんな事を考えながら、リーベはそう言葉を紡ぐ。
対して、エドアルトは、少しの間、沈黙を返す。そして、苦笑を浮かべた。
「
それは、一見、リーベの言葉に対する返答として、おかしなものではないだろう。
事実、その意味合いも、当然ある。
けれど、
「うん。ありがとう。エドアルトさん」
オーアの事について、話を終わらせたように見せかけて、途中で話を逸らしたこと、それに対して気付きつつも、これ以上は詮索しないという宣言でもあった。
きちんと、それが伝わっていたからこそ、リーベは真摯に礼を紡ぐ。
まぁ、見逃されたのは、当人が居ない所で、無許可で聞いて良い話ではないと、察した所が大きいだろう。
そんな事を思いつつ、リーベは、ブルージェムストーンを1つ取り出した。
「じゃあ、コレは私が持ってくし、用事はもうないわよね? ポタ出しちゃうから、エドアルトさんは戻ってて」
その言葉に、エドアルトは片眉を上げる。
「その言い方……リーベさんはまだここに残るように聞こえるんだけど?」
「えぇ、もう少し、やりたい事があるの。そこまで、エドアルトさんに付き合って貰うのはさすがに悪いから――」
「付き合うよ」
リーベが最後まで言葉を紡ぐより早く。穏やかだが、否を許さぬ圧の滲んだ声が響く。
その声に、リーベは苦笑した。
「私1人でも、大丈夫よ?」
「何があるか分からないから、パーティを組んでたとしても1人になるのは避けるべき。そう、オーアに諭していたのは、リーベさんだろう?」
穏やかに笑い、エドアルトが紡いだ言葉は、確かにリーベが口にした言葉で。
自分とオーアは違う、とか。ビョンウンゴや夢魔は少なくても今は無力化したのだから大丈夫、とか。
言い訳が瞬時に脳裏を過る。
が、
いや、別に勝ち負けがある話ではないのだけれど!
余所へ転がっていきそうな思考にアンクルスネアを仕掛けつつ、リーベは苦笑を深める。
「もう、それを言われちゃったら、何も反論出来ないじゃない」
そう軽口を叩いてから、リーベはミルクティ色の瞳に、労りを乗せて小首を傾げる。
「けど、ホントにいいの? エドアルトさんはここのも、ビョンウンゴの方も戦闘参加してるし、疲れてるでしょ」
「大丈夫。体力にはそれなりに自信があるのは、リーベさんも知ってるだろう? それに、もっと朝から晩まで戦闘込みで走り回ったことも、一分の油断も許されず長時間、みたいな精神的に疲れた事もやってるから、それらと比べたら、ね」
そう言ってから、エドアルトは穏やかな笑みを苦笑へと変える。
「ただ、もし、リーベさん1人の方が都合良いのであれば、俺は何も気付かなかった事にして先に戻るよ」
そう紡ぐエドアルトに、リーベは笑みを零す。
穏やかで物腰柔らかで優しい所に、いいなと思った。
頼りになって、職務に真面目なところが、素敵だなと思った。
察しが良くて、鋭くて、けど、だからこそ、必要な時は、そっと見なかった事にしてくれる。
きっと、好きになったのは、こういう所だ。
「うぅん。大丈夫。――実はね、あの試作品が、試作品な訳でもあるんだけど、あれ食べた魔物は強化されたり、放置してると変異種になる可能性があるの。だから、その後始末。オーアちゃんの代わりにここ一帯討伐して回るつもりだったから……エドアルトさんには少し悪いんだけど、一緒に来てくれるなら、とても、心強いわ」
だから、リーベは好意を感謝で包み隠して言葉を紡ぐ。
「――――
*****
夢魔封印後、宿に辿り着き、眠りについたレンは、それから丸2日、眠り続けた。
丸1日過ぎた時点で、さすがに心配になったが、
その後は、オーアが1人で大丈夫だと主張し、異議も出なかったため、その時点で、レンからの依頼は完了となった。
故に、オーアが、元々レンから預かっていた依頼料をそれぞれに配り、パーティは解散。
リーベ、柚葉、エドアルトは、一足先に帰っていった。例外は元々ここへ狩りに来ていたヴァレリーくらいだ。
そんなこんなで、ポートマラヤに来て4日目の昼下がり。
オーアは散歩がてら、港まで足を運んでいた。
断続的に響く、波の音。むわりと、湿気と潮気を多分に含んだ風が、ゆるく、オーアの黄金色の髪を撫でていく。
何となしに視線を向けた海面は、さざ波がキラキラと太陽の光を反射し、輝いていた。
今現在、船は皆出払っているらしく、港に停泊している船は見当たらない。
歩きながら周りを見るが、船がないせいか、人の姿もほぼほぼない。
船乗り達の喧噪がないからこそ、波の音がよく聞こえるのだと納得する。
そのまま道なりに進めば、街の北へと続く道だ。
ちらほらと店が並ぶそこを歩く。ふわりと食欲をそそる匂いがした。軽く辺りを見回すが、屋台も、飲食店の看板らしきものも見えない。
近くの民家からだろうか。
そんな事を考えていると、道の先から、見知った顔が歩いてくるのに気付く。オーアよりも少し淡い金色の髪に、ギロチンクロスである事を示す職服。間違いなく、オーアの友人であるヴァレリーだ。
「ヴァレリー、こんー」
軽く手を上げ、声を掛ければ、何故かヴァレリーは少々目を丸くする。
「オーア。まだこっち居たんだ。何? まだ、目、覚まさないの?」
なるほど、心配してくれたらしい。
納得と共に、オーアは首を横に振る。
「や、よーやくさっき、目を覚ましたよ。さすがに寝過ぎてぼんやりするから、ちゃんと頭が起きるまでもうちょっと待ってって、言われたんで、暇つぶしに散歩してた感じだな。もうしばらく……今日の夕方くらいには帰るよ。そっちは?」
もうしばらくこっち居るのか? 狩り場どうだった?
好奇心に緋色の瞳を煌めかせ、屈託なくオーアは問いを重ねる。
その様を見て、人懐っこくこちらに興味津々な子犬を彷彿としてしまうのは、ついこの間、正にそんな感じの子犬を見たせいだろうか。
そんな事をとりとめもなく考えつつ、ヴァレリーは言葉を返す。
「んー、もう何日かくらいはいるかなー。せっかく来た訳だし。バリオの方は良くも悪くも話通り、って感じ。良い経験にはなりそう。ただ、鍛錬には向いてるんだけど、ドロップがなー」
「あー、しょっぱいんだっけ?」
「オーアとの狩りの後だと、塩ましまし、って感じだな」
冗談めかしてそんな事を言い、肩を竦める友人にオーアは笑う。
「あはは。じゃあ、ヴァレリーが戻ってきたら、次は稼ぎ重視でどっか行こっか。MEで一掃出来て稼げるとこ! どこがいいだろ? 運が良ければラミアが色々落とすけど、あとは監獄辺りか?」
「あー……ちょい遠出だけど、生体は? リムーバのドロップ品は数集めれば割と良い金額いくし」
ヴァレリーの提案にオーアは目を瞬かせる。
「……なるほど。そういや、向こうには滅多に行ってないから選択肢から抜けてたわ」
呟くように言ってから、オーアはヴァレリーへと視線を戻し笑う。
「んじゃ、次はそこ行ってみっか」
楽しそうな笑みを見せてから、オーアは何か思いついたらしく、あ、と声を上げる。
「なんだったら、飲み行くのもリヒの店でもありかもな。あっちはあっちで面白いもんありそう」
つっても、俺、良い店とか全然知らないんだけど。
笑って言うオーアにつられたように、ヴァレリーも笑う。
「よっし、じゃあ、めっちゃ高いって評判のとこ連れてくわ」
「ちょーーっ! お手柔らかになっっ!!」
茶目っ気たっぷりに言ったヴァレリーに、オーアは慌てた声を返す。
そして、2拍ほど間を空けた後、2人揃って笑い出す。
互いに互いの言葉が冗談だと分かっていたからだ。つまりは、ただの茶番である。
そんな何気ないおちゃらけたやり取りを楽しんでから、オーアは軽く笑って言う。
「ま、コレは正当な報酬だからな。マジでヴァレリーがそこが良いってゆーなら、否はないぞ」
「ないない」
オーアの言葉に手を振って、ヴァレリーは軽く肩を竦める。
「飯食いに行って、逆に肩こるよーなとこより、気軽に楽しく食える方が良いな」
「あははっ、どーかんっ!」
笑って同意してから、オーアはふと、何かに気付いたかのように瞬き、小首を傾げる。
「そういや、ヴァレリー何でこんなとこ居るんだ? 散歩か買い物か?」
そう紡いだオーアに、ヴァレリーは軽く声を漏らすと、緩く視線を巡らせた。
「あぁ、街の人から、この辺に料理屋があるって教えてもらったんだ。宿屋のとこも、港の屋台もいいけど、他にも飯食えるとこあるなら行ってみるかなー、って思って」
探してるんだけど。
そう紡ぐヴァレリーに、オーアは好奇心に瞳を煌めかせる。
「それ! 俺も気になる! な、な、俺も一緒していい?」
「いーけど……何? オーアも飯まだだったんだ?」
意外そうにヴァレリーは言う。
昼食時は既に過ぎているため、当然の反応だろう。
故に、オーアはへらりと苦笑して頬を掻く。
「朝食べたのが結構遅くってさ。タイミング逃した」
「なる。ブランチだった訳ね。そーゆー事なら喜んで。んじゃあ、遠慮なく店探し手伝ってもらうわ」
「へ?」
にやっと笑ったヴァレリーにオーアは瞬く。
「教えてもらったのはいーんだけどさ。その店めっちゃ分かりづらい所にあるから、探すの頑張れ言われてんだよねぇ」
「あー……そーゆータイプの店か。新規客取る気あんのかっていうか、むしろ1周回って辿り着けたなら客として認めてやろう、みたいな。飲み屋だとちょいちょいあるの知ってるけど、昼間やってる普通の料理屋でそれは初めてかも」
「……それ、ホントに飲み屋?」
思わず胡乱げな視線を向けたヴァレリーに、オーアはからからと笑う。
「ホントにな! まぁ、1人で回してるとこだと忙しすぎても困るから、常連客のみで十分、って感じらしい。けど、そーゆーとこって、逆を言うと初めてのお客さんが来なくても、店やってけるくらいには常連さんが減らない店って事だから、美味いんだよ」
だから、ここのも楽しみだとオーアはわくわくとした様子を隠す事なく笑う。
「なるほどなー。なら、オーアくん色々知ってそうだし、そーゆー系の店に連れてってもらうでもアリかも」
「あ、なら、絶っっっ対に! 自力じゃ見つけらんねーだろ! ってとこあるぞ。店始まるのがガチの真夜中からだし、分かりにくいとこだし、看板も何も出てねーとこ。ただ、料理はめっちゃ美味しかった」
「へー、どこ?」
「プロの飲み屋集まってるとこの辺り。でも、実際行ってみても、絶対分かんないと思う」
キッパリと断言するオーアに、ヴァレリーの好奇心が擽られた。
「へぇ。なら、そこ連れてってもらおうかな」
面白そうだと笑うヴァレリーに、オーアも笑みを返して親指を立てる。
「了解。んじゃ、戻ってきたら教えてな? 一緒行けるの楽しみにしてる」
楽しげに笑ってそう紡いだところで、ふわりと鼻先を擽る良い匂いに、オーアは少し目を丸くして軽く辺りを見回した。ふと、目に付いたのは、住宅と住宅の間にある細い路地。
土がむき出しになっていて薄暗く、目立たない、そうそう人など通らなさそうな道だ。
「オーア」
名を呼ばれ、オーアはヴァレリーへと視線を移す。彼も、オーアと同じくその路地を見ていた。
それで察する。
「ん。俺もそっちだと思う」
頷きながらオーアが言えば、
だよな、とヴァレリーの楽しげな声が返る。
「んじゃ、行ってみよーか」
「だな!」
いい匂い嗅いだら一気にお腹空いた。
なんて、笑いながら2人はなんてことない細い路地へと消えていったのだった。
****
夕刻。
陽が沈むにはもうしばしかかりそうな頃合い。空が淡い青、黄、オレンジのグラデーションに染まる頃、港の外れにオーアとレンは立っていた。
「大丈夫か?」
「もー、大丈夫だって言ってるでしょ。さすがにもう目は覚めたってば」
軽く膨れて文句を言うレンに、オーアは息を吐く。
「そう言いつつ、足下おぼつかなくて何回転びかけたよ」
「うぐ……」
オーアの言うとおり、ここに来るまでの道のりで軽く3回以上転びかけていた少年は、声を漏らして押し黙る。
「確かに睡眠不足は解消できてんだろーけど、実は無茶した分は、回復しきれてないんだろ」
「……まぁ、ね。無茶した自覚はあるよ。とはいえ、このくらいなら必要経費。むしろ、この程度で済んだなら安いものかな」
開き直ったらしい。軽く肩を竦めてそんな事をのたまう少年へ、オーアはじとりとした視線を向ける。
その視線を受け、レンは口を開く。
「そんな顔しなくても、本調子に戻るまでは大人しくしてるから大丈夫」
「……なら、いーけど」
仕方なさげにオーアは息を吐く。
「まぁ、クリムもルキナちゃんもいるし、大丈夫か」
自身を納得させるかのようにそう呟いて、オーアはおもむろに両腕を頭上へと上げる。そのまま、くっと軽く背を逸らして伸びをする。
その様子をレンはなんとなしに眺めていた。
ただ、どこかぼんやりと思う。
これで、帰れるのか、と。
後は、オーアがこれから開くだろうワープポータルに乗ってしまえば帰れるのだと。
とりとめなく思う。
やっと。
ようやく。
懸念無く。
安心して、ルキナの元へ帰れるのかと。
半魔というこの体は、諸事情で後天的な先祖返りを起こしてしまったルキナと同じ刻を歩むにはこれ以上無く適したもので、その1点のみで物を言えば、感謝しているのだが、同時にこれ以上になく不安にも思っていた。
夢魔の半魔という事は、片親が
もし、
けれど、何の根拠もなかったけれど、きっとそうではない事を、
それが単純に作ってみたかっただけなら。作った後は興味を失い、故に僕を放置したのなら、何の問題もない。
もしそうならば、素直に感謝をするだけだ。
けど、
敢えて、放置をしていたのなら、いつか必ず、ソレは自分に干渉してくる。
その時、ルキナを巻き込み、危険に晒してしまう事が何よりも怖かった。
だから、本当は、その懸念を抱えたまま、ルキナと再会する気は全くなくて。あの再会は全くの偶然で、俺にとっては完全に不意打ちでしかなかった。故に、少々テンパってしまい、
だって、それを知れたから、懸念を抱えたままでも、大丈夫だと。ルキナの要望通り、彼女の元に留まれるだろうと判じ、彼女の要望を通すことに決めたのだから。
――否、それだけではない。
僕も離れがたかったのだ。やっと会えたあの子と。
だから、俺の、
あの子が望んだから、と。
そう言い訳して。
けれど、否、だからこそ、
一緒に居ることを選んだのなら、それは当然のことだった。
故に、常に、少しだけ、気を張り続けていた。
だからこそ、今回、初手で相手からの干渉に気づく事が出来たのだ。
故に、これで正しかった訳だけど。
それに……。
なんとなしに伸びをし、そのまま海を見ているオーアの後ろ姿を眺める。
ルキナと再会しなければ、おそらく、否、確実に、彼との縁は結べなかった。
確信している。
今回、
もっともっと成長し、力量を上げられていたのならともかく、まだ
よくよく、分かってる。
向こうからすれば、ただ依頼を遂行しただけだったとしても、今、こうしていられるのは、間違いなくオーアの尽力のおかげだ。
依頼である以上、当然対価は発生しているし、それは当然支払っているが、それはそれ。それを差し引いても、大きな借りが出来たと思う。
返すあてが全く思い当たらないのも困った。
けど、まぁ、それは、おいおい考えよう。
そう胸中でのみ呟いて、レンは細く長く息を吐く。
穏やかに、潮風が頬を撫で、ゆるりと吹き抜けていく。
背後の木々が緩く揺れる音がする。
前方に広がる海が陽の光を弾いて煌めき、一定の間隔で、これまた穏やかな波の音を響かせていた。
――よかった。
こぽり、とそんな感情が湧き上がる。
僕が、俺の、レン・ストロフィードの記憶を思い出せてよかった。
――思い出さないままなら、きっと、僕はアレの思い通りになっていた
懸念を抱えたままでも、ルキナの側に居ることを選んでよかった。
――おかげで彼を縁を結べた。
ちゃんと日々、少しの警戒を続けていてよかった。
――だから、ちゃんと
――自分の選択は、
深く、深く、安堵する。
今回これで、自分の懸念、柵もなくなり、目の前は穏やかな景色。
あとは、もう、帰るだけ。
もう、安心して、帰る事が出来る。
そう、改めて認識し、実感出来た。
――――ふつり。
どこかで、無意識に張っていた緊張の糸が、微かな音を立てて切れた気がした。
ふと、レンの視線の先、海を見ていたオーアがレンの方へと振り返る。
オーアの背後に広がる青に負けないほど、オーアの黄金色の髪が太陽の光を弾き、煌めいている。その様をなんとなく眺めるレンへと、オーアは笑いかけた。
「っし! そんじゃ帰るかー」
ポタ出すなー。
その宣言に、レンはもう少し視線を上向ける。
自然と、オーアの緋色の瞳と目が合った。
刹那、オーアの瞳が大きく見開かれる。
「ちょっ! おい、どうしたっ!?」
慌てた声を上げ、オーアはレンとの間を詰める。その勢いのまま、レンの肩を掴んだ。
焦りの色を滲ませ、顔をのぞき込んでくるオーアに、レンは少々眉を寄せる。
どうしたと言われても、レンは何の異常も感じていない。
むしろ、突然騒ぎ出したオーアにこそ、どうしたと言いたいくらいだった。
そんなレンの内心を察したのか、はたまた、訝しげな顔をするばかりで何も答えないレンに焦れたのか、オーアは叫ぶように声を上げる。
「目!」
「……目?」
目が、どうかしたらしい。が、レンの視界に異常はない。
痛みも違和感も感じない。
で、あるならば、だ。
「――手、邪魔」
端的に言い、肩を掴むオーアの手を振り払う。
声をかけたのもあり、意図は伝わったのだろう。レンから一歩離れたオーアを視界の端に映しつつ、レンは短剣を鞘から引き抜く。刃を鏡代わりに己の顔を映し、レンは目を丸くした。
オーアの言葉の意味が分かった。
しっかりと良く研がれている短剣は太陽の光を反射し、鋭利な光で物騒に煌めく。その刃に写るのは、見慣れた、まだあどけなさが残る自分の顔だ。
けれど1点。明確に違うところがあった。右手で短剣を持って己の顔を写しながら、レンはそっと、左手の指でゆっくりと目元をなぞる。
「色、が……」
刃の中の自分が同じ動作を返すのを見つつ、ぽつり、と声が零れた。
瞳の色が変わっていた。
どこか禍々しさを感じる血のような赤から、アメジストのような深い紫に。
瞳孔の形も変わっていた。真昼の猫の様な縦に細いものから、人らしい丸いものへと。
それだけで、他の顔立ちなどは何1つ変わっていないというのに、ただの少年のような顔をした自分が、短剣の中から、こちらを見つめ返していた。
レンは1つ息をする。そして、理解する。
ついさっき、ふつりと切れた緊張の糸。
今までずっと、自分自身が生き残るために、ルキナを巻き込まないよう、何かあればすぐに察知出来るように、無意識に、本能的に、自分の性質を魔に寄せていたのだと。
つまり、今のこの状態が、生来の姿なのだ。
気付いてしまえば、理解は容易い。
半魔である
そして、今この状態は、瞳孔の形が示すとおり、人寄りなのだろう。本来は、今までより、ずっと人に近い存在だったのだとわかり、レンは無意識にほっと安堵の息を吐く。
けれど、同時に思う。
それは、少し、困るな、と。
故にレンは刃に写る自分を見つめた。
そして、意識する。
人寄りも、魔に近くなるように、と。
これも、一種の本能的なものなのだろう。刃に映るレンの瞳が、すぅっと変化していく。
紫から赤へと。
その光景に、レンの頭上から、あ、と小さく声がこぼれ落ちてくる。
すっかり元の、見慣れた赤の瞳に戻った事を確認してから、レンは短剣を鞘に収める。
「……いーのかよ」
頭上から降ってくるオーアの声。
レンはオーアを見上げ、見返してから頷いて見せた。
「うん。これでいいんだ」
「今のがホントの色なんだろ?」
言われた言葉に、レンは目を丸くする。
「気付いたんだ? 最初、あんなに慌ててたのに」
小さく笑い、軽く揶揄うように言葉を紡げば、オーアは軽く頬を膨らませ、拗ねたような表情を見せた。
「いくら鈍くっても、さすがに
オーアが鈍いとか何の嫌みか冗談だ。
もしも、リーベや柚葉が聞いていれば、半眼になってそう突っ込みそうな事をオーアはのたまう。
が、幸か不幸か、今この場に居るのは、オーアとレンのみだ。故に、そう突っ込む者は居らず、レンはちょんと小首を傾げる。
「オーアさん、鈍い方なの? アクビさんに感覚鋭いって、言われてなかったっけ?」
ポートマラヤに着いてすぐの記憶をなぞりつつ、不思議そうに見上げてくる赤の瞳にオーアは眉を寄せる。
あー、とか、うー、とか、意味のなさない声を漏らした後、がしがしと、オーアは頭を掻いた。
「にぶい、っつーか……ムラがある、らしい。純粋な不死・悪魔系統なら、かなり鋭いらしい、んだけど……墜ちた人とか、半魔だったりすると、一気に精度落ちるし、人の魔力痕系統だとむしろ鈍いらしいんだよな」
自分じゃ、よー分からん。
そう言って、オーアは息を吐く。
今、オーアは口にしたのはハイアコライトの頃、巻き込まれたトラブルの副産物だ。
不死・悪魔に襲われやすい体質。それについて、人を辞めてまで違法な手段で研究しているマッドサイエンティストに拐かされた事がある。
どうにかこうにか事件が終息したあと、そのマッドサイエンティストから押収したオーアについてのデータと退魔班の上司の知見を合わせ、後日伝えられた情報がそれだった。
とはいえ、オーアにとって、実感はあまりなく、良く分からない。
まぁ、全く心当たりがないという訳でもないのだが、感覚的に腑に落ちない、というのが正直な所だった。
オーアからすれば、不死・悪魔に対して鋭いと言われるが、2回も
その上、陣や術式だって、
それよりも、だ。
オーアは己の思考を軌道修正する。
「俺の事より、レンの方だろ。なんで、わざわざ本来の状態から、そっちに戻してんだ? そんな必要ないだろうーに」
至極当然だろう疑問に、レンは苦笑、否、誤魔化しを含んだ半笑いを浮かべる。
「いやー……うん……必要は、ちょっと、あったり?」
「は?」
間の抜けた声を上げた後、オーアは眉を寄せる。
「おい、もしかして、まだ他にも何かあるのか?」
真剣な眼差し。他にも別の要因となる相手が居るのか。まだ終わっていないのかと詰め寄る青年に、レンは慌てて手を振り、否定する。
「あっ、違う違う、そーゆーのじゃないから安心してっ」
「じゃあ何なんだよ」
レンの返答に、小さくホッと息をつき、それならどういう事だと、オーアは軽くレンを睨め付ける。
レンは、決まり悪そうに視線を逸らした。
「いやー……その。……こっちに戻しておかないと、確実に俺、倒れることになると思うんだよね。いや、その前に本能的に勝手に戻るかもだけど」
「はぁっ!?」
ぽそっと落とされた爆弾に、オーアは目を剥く。それは十二分に深刻な事態ではないか。
「ちょっとまてそこ! どういう事だ!」
オーアは勢いよくレンの肩を掴み、詰問する。
先程も見た光景だが、その時と違うのはレンの反応である。
後ろめたいのか、視線は頑なに逸らしたままで、明後日の方を向いている。
そのまま数秒。
「レン」
「いやー……」
「言 え」
「これは別に、特に問題ない奴だし……」
「倒れるような状況、問題ない訳あるか!」
ごもっとも。
オーアの態度に、こちらが口を割るまで引く気が無い事を察し、レンはもごもごと口を開く。その視線は相変わらず、オーアの視線から逃れようとするかのように、明後日の方を向いたままだ。
「いやー、その、ね? 不幸自慢するつもりはないんだけど……僕って、ここでの扱い、最悪だった訳でさ」
「……おぅ」
「まともに世話にしてくれる人なんて居ないし、むしろその真逆な訳で……だから、食べ物とか……残飯というか、生ゴミ一歩手前、みたいなのがデフォルトで……温かい料理とか、冷えた飲み物とか、ここ脱出して初めて口にしたくらいにはアレだった訳で……」
レンの言葉にオーアは頬を引きつらせる。ろくな扱いを受けていなかったのは知っていたが、具体的に聞くと、精神的にくるものがある。
「……よく、生きてたな」
「純粋な人だったら、餓死なり、腐った物に当たるなりして死んでても何ら不思議はないよね。そも、魔寄りでいたから、魔力で足りない栄養素諸々代用出来てた訳で……今、年齢に見合った成長出来てるのも確実にそのおかげだし」
まるで他人事のように軽くそう言って、レンは肩を竦める。
「ここの気候、温暖だし、海のそばで湿気もあるからね。ゴミ漁るより、道ばたに落ちてる屋台飯の方が安全な食べ物だったなぁ。まぁ、見つからなくて、ここら辺に生えてる草食べてる方が多かったかな」
「…………ぉぅ」
「そしたら、植物に宿る魔力だけ吸えるように、いつの間にかなっててね。まぁ、本能的に魔寄りになってた、って事なんだろうけど。おかげで、もの凄くまずい草とか、毒草とか、木とかも、
なんて、軽い調子で紡がれる追撃に、オーアは深々と、本当に深々と息を吐く。
それを見て、レンは思わず目を丸くした。
「……大丈夫?」
「――ダイジョブ。……なんつーか……これ、聞いたの今で良かったかも。そーゆーの聞くとちょっと、んー、なんていうか……思うとこは出てきそうだ」
眉を寄せ、苦々しい口調で漏らすハイプリーストに、レンは小さく息を吐いた後、肩を竦めて見せた。
「不幸自慢するつもりはない、って言ったんだけどな。というか、そもそも、事前に軽くは僕の事情話してたでしょ。世話してくれる人も居ない迫害されてる幼子がどんな生活になるか、なんて想像つくでしょ。実際、あの黒髪のお姉さんは想像ついてたみたいだし」
「想像力足りてなくて悪かったな」
反射で言い返してから、オーアは、この街での柚葉の態度を思い出し、納得する。
これに思い至っていたのであれば、そうもなる。
それはともかく。
「で。魔寄りだったから、ここで生き抜けたのは分かったけど、それとレンの状態と、どう繋がるんだ? 今は全然環境違うだろ」
オーアの言葉は正論で、更にレンの視線が余所を向く。
「……そー、なんだけどさ。そんな環境だったのもあって……弊害、っていうか……空腹感は、完全に馬鹿になってるんだよね」
「……ん?」
「そんな訳で食べなくても問題ないもんだから、胃の容量とかもない訳で……」
「んん?」
風向きが変わってきたぞ? とばかりに小首を傾げ始めたオーアに気づく事なく、レンは相変わらず、視線を逸らしたまま、続きを紡ぐ。
「今の感じからすると……人寄りになると、魔力でのフォローがなくなるっぽくって……その、そうなったら確実に栄養失調になるな、と」
ぽそぼそと紡がれた言葉は爆弾同然で、オーアは目を剥く。
「ちょっ! おかしいだろっ! ちゃんと飯食べてんのにっ!」
過酷な環境と、半魔であったが故に、魔力で代替する事で食物を食べなくても得られていた。故に、空腹感が麻痺している。それに不随して、胃が小さくなっている。
この辺りは納得出来る。が、それは過去のことであるはずだ。
特に
あのルキナちゃんが、同居人を飢えさせるなど、天地がひっくり返ってもあり得ない。
「確かにあんたの食う量、普通の子供の半分もないけど、半魔だからこれで足りてる、って……」
半分捲し立てるように紡いでいたオーアの口がふと止まる。
オーアの脳裏を過ったのは、少年の異様に少ない食事量と、オーアやルキナから魔力を貰っている少年の姿。
直感が働き、あ、と声が転がり落ちた。
「おま……まさか、
その言葉に、レンは視線どころか、顔ごと、ふいっと背ける。
「……ウソは言ってないでしょ」
それは、実質、オーアの言葉の肯定だ。
ぴきり、とオーアはこめかみが引きつるのを知覚する。
1つ、息を吸った。
「あ・ほ・かーーっ!! それは足りてるって言わねーのっ! 普通に栄養摂れるんだから、ちゃんと食えっ!! 常に非常食使ってるような状態にしてんじゃねーよっ!!?」
再び勢いよく肩を掴み、怒鳴るオーアに、レンは眉を寄せ、憮然と口を開く。
「そうは言うけどさぁ。満腹感の方はちゃんと仕事してるし、元々俺、腹八分目くらいで満足しちゃう質だったから、満腹まで食べると苦しいし気持ち悪くなるしさー。それ以上無理に食べようもんなら、吐くよ?」
きっぱりと断言したレンに、オーアは口をへの字にしつつも、少しは落ち着いたらしい。
レンの肩から手を離す。
「そりゃ、無理して吐いちゃ、何の意味もないけどさぁ……」
「でしょ? だから、現状維持で十分――」
人差し指を立て、言うレンの言葉をオーアは遮る。
「――でも、それに依存してる事で、歪みはあるだろ。何だ」
緋色の瞳が鋭くレンを射貫き、黙秘は許さないと無言で圧をかける。
レンは思わず沈黙し、そして息を吐いた。
「……鋭いね」
「そりゃ当然。レンの知り合いの中じゃ、1番そういうのに関わってるからな」
それはそう。
退魔型のハイプリーストであり、
つまり、それだけ、経験、知識共に蓄積されているという事だ。
納得しつつも、レンは肩を竦めた。
「確かに、魔力に頼ってるデメリットはあるよ。けど、それは、僕が元々そういう存在だからで、歪みではないから安心して。僕は、堕ちた訳じゃない、元々、生まれた時からこういう存在なんだ。この差は大きい。だから、魔に寄る事で、歪みは起こりえない。
「で?」
敢えて長々と紡いだ説明を、たった一言で切って捨てられ、レンは苦笑する。
「……やっぱ、誤魔化されてはくれないか」
半分くらいは予想していた結果だった。
ただ、それで納得してくれたことにしてくれないかな、と期待していたのだが……黄金色の退魔師に、そのつもりは皆無らしい。
当然だろ、ときっぱり断言し、オーアは口を開く。
「で、それで? デメリットって?」
黙秘は許さん、と変わらず、じっとこちらを見据えるオーアに、レンは1つ息を吐く。
仕方ない。と思った。
目の前の青年には、今回の件で非常に大きな借りが出来たところだ。自分に答えられることなら、出来るだけ素直に応じる事で、借りの分割払いとさせて貰おう。
勝手にそう判じて、レンは軽く肩を竦めてみせる。
「しょーがないなぁ。……一言で言うなら、
「ん?」
オーアは首を傾げる。
鋭さが霧散し、少し間の抜けた表情を晒した所を見るに、よく意味が通じてないのだろう。
レンは人差し指を立ててみせる。
「健康維持……生命維持、って言ってもいいかな。それを維持するのに魔力を使っている訳。つまり、ずっと、今も、現在進行形で少しずつ魔力を消費してるんだ。という事は当然、魔力枯渇はそのまま命の危機に直結してくる。まぁ、普通の人でも、重度の魔力枯渇は死因になり得るけどね。僕の場合は軽度でも、致命傷になりかねない。オーアさんが病院でやらかしてたけど、もし、僕があの状態になったら、確実に死んでるだろうね」
縁起でもないことをさらりと言って、レンは軽く息を吐く。
「だから、魔力を奪ってくる相手との相性は最悪。正直、肉体的に痛めつけられるより、キツいしヤバい。魔力とられると本気で動けなくなるからなぁ……」
「……もしかして、あの時1番キツかったのって、陣の聖属性ダメージより、陣を維持し続ける事だったりした?」
「当たり。いや、まぁ、聖属性ダメの気持ち悪さも相当だったけど、一応半魔な分、軽減されてるからね。……だから、実は、あの時、魔力くれたのは、ものすごく、ありがたかったんだよね。……休んでも、怪我とか体力の回復は出来ても、魔力は回復しないから」
ありがとね、とレンは口にする。
一拍置いてから、オーアは納得した様子を見せた。
「常に魔力を消費してるって、言ってたもんな。むしろ減ってくだけって事か。……そっか、だからか。魔力の自然回復が出来ないから――」
その先をレンが引き継ぐように言う。
「うん。故に俺は他者の魔力を必要とする」
静かに紡いでから、レンは軽く肩を竦めた。
「まぁ、ちょこっと横道逸れちゃったけど、そんな訳で、普段から魔力の残量には気をつけないといけない、って感じかな? スキルとか使うなら特にね。
故に、魔力に依存していると表現した。
少年のそんな説明に、オーアはへにょりと眉を下げる。
「……ちなみに、魔力の方はちゃんと今、足りてるんだよな?」
心配そうな声色に、レンはぱちりと目を瞬かせた。
至極当然すぎる事を聞かれたが故の反応だった。
「当然。こっちは僕の生命線だもの。誇張抜きでね。だから、ちゃんと余裕を持たせてるし、もし、魔力が奪われるなり、使い過ぎるなりしても、ある程度は大丈夫なように対策も打ってる。だから、今回持ちこたえられた所はかなりあるね。さすがに今からもう1回、同じことやったら、今度はただじゃ済まないだろうなぁ」
そう紡いでから、レンは不思議そうに小首を傾げる。
「どしたのさ。急に」
「だってお前、俺から魔力摂る時も、そんな大量には持ってってねーし、普段だって、そんなに多くポーションとか飲んでるようにも見えないしさ。今回だって、終わった後に追加で魔力摂ってったりとかしてないだろ。戦闘中のあの時だけだ。それでホントに大丈夫なんかなって心配にもなるっての」
その言葉に、レンは目を丸くする。
そして、これ見よがしに息を吐いた。
「ほんっと、お人好しだね、キミは。そんなんでそっちこそ大丈夫な訳? 足下すくわれたり、他のに食べられたりしないでよ? ルキナじゃないんだからさー。お人好しもほどほどにして、ちゃんと警戒心も持たないと」
「それは今関係ねーだろ。話逸らすな」
その手には乗らん、とオーアは軽くレンを睨め付ける。
レンは軽く肩を竦め、片手を腰に当てた。
「逸らしてるつもりはないよ。でも、ま、そうだなぁ。キミにそう見えてるなら、それはキミが魔力をくれたのが大きいね」
レンの言葉に、オーアは訝しげな顔をする。とてもそうは思えなかったからだ。特に今、魔力が自然回復しないと聞いた後なら、尚更だ。
「あんたが取ってく量って、あの時もそうだったけど、フル支援1人分くらいなんだけど。そんなんじゃ、足しになってるかどーか、じゃねーの?」
端から聞いていれば、オーアの疑問ももっともだ。
故にか、レンは何事か考えるように、そーだなぁ、と呟く。
そして、オーアを見上げた。
「とりあえず、先に僕のことから説明しようか。まず、前提。僕は他者の魔力を必要とする」
「おぅ」
「吸収した魔力は、当然だけど、僕のとは違う魔力だ。だから、そのままじゃ、吸収した魔力は、その時点では僕の魔力にはなっていない。他者の魔力が僕の中にあるだけだ」
「……そうやって聞くと、その時点で十分ヤバいんだけどな。普通なら強烈な反発必須じゃん」
「まぁ、人同士の魔力は反発するからねぇ。こーゆーとこはホント、半魔、人じゃないんだなーって思うよ。でも、人だって、魔力が含まれた野菜とか料理食べても平気でしょ。イグ実とか、そーとー魔力濃いしね。だから、まぁ、そんな感じなんだと思う」
そう行ってから、レンは話を戻す。
「で、他者の魔力を自分のものにするには、僕の魔力と同じ色に染める必要があるんだ。食べ物を消化する感じだと思ってくれていいと思う。癖の無い魔力の方が簡単に染まってくれるから、消化に良いって同じかな。だから、ルキナのとか、ホントすごいよ。あっという間に染められちゃうんだもん。だからこそ、危ない、っても言うんだけどね。瘴気耐性がない、ってこういう事か、って感覚的に分かっちゃったから余計心配」
1つ息をついてから、レンは話を続ける。
「話戻すんだけど、どういう仕組みかは俺も知らないけど、吸収した魔力を染めると量が増えるの。水が気化すると馬鹿みたいに体積が増えるんだけど、それみたいなものなのかな?」
「いや、俺に聞かれても……」
首を傾げるレンに、オーアは困ったように眉を寄せる。
それはそう。
というのはレンも承知の上だったらしく、あっさりと頷き、レンは口を開く。
「ちゃんと測定とか、出来る訳じゃないから、なんとなくの感覚でしかないけど、大体、含有魔力量の3~5倍は回復してる感じがするね」
「へぇ」
オーアは興味深げな声を漏らす。
と、いう事は、フル支援1人分の魔力量で、3~5人分は回復するということだ。成長途中のアコライトの頃は、魔力量が多い子だとしても5人も基本支援をかければ、魔力が底をつく。それを思えば、なるほど。レンの言うとおり、十分な量と言えた。
オーアが納得しかけたその刹那、レンの声がオーアの耳朶を叩いた。
「――オーアさん以外の魔力は、だけど」
「え?」
目を丸くし、瞬いたオーアを、若草色の少年はじっと見上げる。その赤の瞳に、どこか妖しげな光が揺らめいた気がした。
ゆっくりと、レンは言葉を紡ぐ。
「キミはもう少し、自分が、僕らみたいなのにとって、特別だって事を理解しといた方がいい。……おかげ様で色々初めてだらけを経験させてもらったけどさ」
後半は、独り言のように呟く。
正直な所、人を見て美味しそうなんて思った事も、その魔力を美味しいと感じてしまったことも、出来る事なら、経験などはしたくはなかった。
そう、思うが、それは、決して、彼が悪い訳ではない。
そして、レンにとっても大きなメリットがあったのも事実だ。
故に、それらは敢えて伏せ、レンは続きを紡ぐ。
「キミの魔力を染めるとね、普通とは桁違いに、それこそ、余裕で10倍くらい、回復するんだ」
「へ?」
思わぬ言葉に、オーアが間の抜けた声を漏らす。
「栄養豊富だから、美味しそう、って思われるのかな? でも、良薬口に苦しって言うし、栄養があるのと、美味しいは必ずしもイコールじゃないから、きっと、それだけじゃないんだろうけど」
その辺りはさっぱりだ。
軽く肩を竦め、言ってから、レンはオーアを見つめる。
「しかもキミの場合、ルキナ程じゃないとはいえ、かなり癖のない魔力だからね。十二分に染めやすい。だから、下手な回復薬よりずっと回復が早い。娯楽で美味しいから狙うような生粋の輩の感性は分かんないっていうか、理解する気も無いけど。でも、僕らみたいなのにとって、回復剤としてははちゃめちゃに有用なのは確かだよ」
「えっと……」
さすがに反応に困るらしい。言葉を探すオーアに、レンは、ふっと苦笑する。
「魔法薬って、魔力の癖がない人の方が作りやすいから、キミ、ケミとか向いてたかもね」
軽い口調で、冗談っぽくそう言ってみせると、オーアは、ほっと表情を緩めた。
「あんなゴチャゴチャしたの、覚えられる気がしねーっての」
そう軽口を返してから、オーアは1つ息を吐く。
確かに、魔力不足にはなっていなさそうなのは、理解した。
ただ、今の説明を踏まえると、もう1つ、懸念が出てくる。
「じゃあ、逆に過剰だったりはしてないのか?」
フル支援10人分なんて、結構な魔力量だ。
そんな大量の魔力を成長途中の幼い体で受け止めきれるとは思えない。
それはそれで大丈夫なのかと、そんな不安から、オーアは問う。
そんなオーアに、レンは呆れた視線を向けた。何を思って、この質問に至ったのかを察したらしい。
「だから、お人好しも大概に、って言ってるのに。半分夢魔なんだから、普通の人より、
「半分は人だろーが。そりゃ、お前見てると、魔力保持量、多少は多いかな、って思うけどさ。でもそれは、普通の人の範囲だ。なら、限度はあるだろ。成長途中の体なら、尚更だ」
迷いなく返された言葉は真っ直ぐで、レンを見返す視線も同様だ。
「……調子狂うなぁ」
レンは軽く頭を掻き、呟く。そして、1つ息を吐いてから、口を開いた。
「まぁ、実際のとこ、今の俺の魔力量は多いよ。
軽く肩を竦め、さらりと言った少年に、オーアは顔色を変える。
慌てて口を開こうとしたその刹那、レンは、オーアを制するように、右手を突きつける。
「だ・け・ど!」
左手を腰に当て、軽く睨め付けるように、オーアを見上げる。
「僕は半分夢魔でもある訳! そもそも、他の魔力を自分の物に出来るって時点で、普通の人とは違うんだから、何で他にも違うところがあるって思わないかなぁ」
敢えて呆れたように言って見せるレンの様子を見て、オーアに冷静さが戻ってきたらしい。
1つ息を吐いて、オーアは問いかける。
「そう言う、って事は、何かあるんだな?」
レンは頷いた。
「うん。これは、感覚的なもので、実際にどうなっているのかは僕自身、ちゃんと正確に把握してる訳じゃないけど……」
一旦言葉を切り、レンは左手を己の胸に当てる。
「僕は、僕自身の魔力を貯めておく所とは別に、吸収した魔力を貯めておくとこがあるっぽいんだよね。ポーションとか、オーアさんの魔力とか、ルキナのとか、複数種類の魔力があっても中で反発が起きない所を考えると、蜂の巣みたいな形にでもなってるのかなぁ」
小首を傾げ、レンは呟く。
とはいえ、それが答えが出ない疑問なのも分かっているらしく、すぐに話を元に戻す。
「まぁ、それはともかく。吸収して即、魔力を染める事も出来るけど、自分の中に貯めておいて、好きな時に好きな量だけ染めることも出来るんだ。だから、オーアさんとか、ルキナの魔力は、基本貯めさせて貰ってる。オーアさんの魔力は少量でかなり回復するし、ルキナのは即効性がものすっごく高いからねぇ」
だから、すぐに染めちゃうのはポーションとかの自然魔力の方だな。
小首を傾げてレンは言う。そんなレンに、ふと思いつくものがあった。
「もしかして、さっき言ってた、魔力切れ対策、ってこれの事か?」
オーアの問いに、レンはにこりと笑う。
「ん。対策の1つではあるよ。特にドレイン対策のね。どーやら、この、貯めてある魔力って、染める前なら、まだ、僕の魔力じゃないらしくって、そっちは取られないみたいなんだよね。まぁ、そうじゃなくても、色々予備はあるに超したことないし、いざって時に無茶が利くからね」
「そもそも、無茶すんな。まー、今回みたいなのはしゃーないと思う。けど、それでも、無茶しすぎ……いや、陣の流用出来たのは、めっちゃありがたかったけど……」
うんうんと悩み始めたオーアを見て、レンは苦笑する。
「ま、心配しなくても、しばらくは大人しくしてるよ。今回ので、予備はほぼ空になっちゃったからね」
さすがにこの状態で、無茶をする気はないよ、とレンは言う。
それを聞いて、オーアは眉を寄せた。
「大丈夫なのか? それ。魔力いるか?」
後は帰るだけだし、と言うオーアに、レンは苦笑を深めた。
「ホント、さっきも言ったけど、お人好しもほどほどに。もう少し出し惜しみした方がいいよ。……とはいえ、正直助かる」
「なら、素直に貰っとけ」
そう言って、手を差し出すオーア。その手を取り、レンは軽く口付ける。
するりとオーアから抜けていく魔力。程なくして、レンはオーアの手を離す。
「ん。ありがとね」
「どーいたしまして」
そう言った後、オーアは何となしに、己の手を見る。
「予備がほぼ空って言ってた割には、いつもと同じくらいな気がするけど……」
何気なく呟いた言葉に、答えが返る。
「そりゃいつもと同じくらいもらったからね。
「なら、もっと持ってっても良かったんに」
オーアの言葉に、レンは呆れた息を吐く。
「魔力枯渇やらかしたばっかの人に、そこまで負担かけらんないでしょ。さすがに、僕だって、そのくらいの良識はあるよ」
「……もう、2日も前の事なんだけどな。それ」
思わず言うが、その2日間、レンはずっと眠っていたのだ。
レンの感覚的には、つい先程なのかもしれない。口にしてから、オーアはそう納得する。
「だとしても、魔力生成反動起こしかねないことする訳ないでしょ。あとね、僕が疲れるからやだ」
「ん?」
唐突に出てきたよく分からない言い分に、オーアは首を傾げる。
「疲れる、って?」
「うーんと、細いストローと太いストローだと、どっちの方が飲みやすいか、っていうか……あぁ、指先切るのと、胴体切るのとじゃ出血量がかなり違うでしょ。そんな感じで、体の末端部分からだと、一気に大量には取れない訳。まぁ、その分加減が効かせやすいんで、オーアさんから貰う時は、敢えてそこから貰ってるんだけど。だから、負担にならないよう、いっぱい貰う、って結構難しいんだよ。ちょっとづつ、貰って、それをこつこつ貯める方が楽」
まぁ、人から貰う分には、なので、物に込められた魔力であれば、その限りではない。
そして、いつ突然何かに巻き込まれても良いように、もう少し蓄えが欲しいとも、思ってはいる、が。それは、このお人好しに言う気はない事だった。
(とりあえず、ルキナには悪いけど、魔力水の融通お願いして、後は、イグ幹で色々調達かな。さすがというか、あそこのハーブも水も、魔力純度良いからなぁ)
オーアに言った言葉の裏で、そんな事を考えながら、レンは軽く手を振る。
「そんな訳で大丈夫だから。ま、気にしてくれる、ってゆーなら、そのうち、また会った時にでも、魔力くれると助かるかな」
「ん。分かった。大丈夫ならいい」
1つ息を吐き、言ってから、オーアはからりと笑い、ブルージェムストーンを取り出した。
「んじゃ、今度こそ帰るな」
「ん。ルキナとか、そわそわしてそうだし」
その様子が思い浮かんだのか、はたまたオーアの笑みにつられたのか、小さく笑みを浮かべて、レンは頷く。
と、そこで、オーアの声が追加で振ってくる。
「あ、そうそう。食事の件は、ちゃんとルキナちゃんとクリムにも報告するからな-」
何気ない調子でさらっと落とされた爆弾に、レンは、ぎょっとしてオーアを振り仰ぐ。
「ちょっっ!! 必要ないでしょっ! そんなの!!」
レンの言葉に、オーアは呆れた目を向ける。
「いや、必要ない訳ないだろーが。無理しない程度に、少しずつでも食えるようにはしとかないと、こっから先、困るだろ」
食べ物とか、料理とか、栄養がどうたら、ってのは、あの2人の方が詳しいはずだしな。
当然のことを言っているだけ、という、いっそ穏やかな口調で紡ぐオーアに、レンが吠える。
「ルキナに心配かけるようなことは言わないで欲しいんだけど! 心底っ!」
「あぁ、バレたら心配かける自覚はあんのか」
納得したようなオーアに、レンはぐ、と言葉に詰まる。
図星を指され、二の句が継げなくなったらしい。
そんなレンに、オーアは追い打ちを掛ける。
「ってゆーか、そもそも。今の、現時点で、ルキナちゃんが心配してないとは思えないんだけど?」
「うぅ……」
「まぁ、今まで現状改善してこなかったツケだと思って諦めて心配されとけ」
呻く少年に、軽く肩を竦めてそう言うと、オーアは青石に魔力を籠め、ワープポータルを唱えたのだった。
***
そわり。
ちょこちょこと、紫がかった青の髪が揺れる。
椅子に座って。けれども、すぐに立ち上がって。
意味もなく部屋の中を歩き回って。
不安そうに玄関から外の様子をうかがって。
戻ってきて。
そわそわと落ち着きなく、どこか小動物を彷彿とさせる動きだ。
そんなルキナの様子を見て、クリムは苦笑を浮かべる。
「少し、落ち着いてくださいな」
「わ、分かってはいるんだけど……っ」
そわそわ。
ルキナの言葉とは裏腹に、桔梗色の髪は相変わらず小刻みに揺れ、深い蒼の瞳があちらこちらへ揺れ動く。
それにクリムが苦笑を深めたところで、立ち上る湯気に気付く。丁度、お湯が沸いたらしい。
「お湯が沸いたようですので、一旦、お茶にしましょうか」
その提案に、ルキナがこくこくと頷く。
「う、うんっ! 私やるっ」
「はい。お願いしますね」
微笑み、頷き返せば、ルキナはぱたぱたとキッチンへと向かう。
挙動不審な彼女に、お茶の用意を任せたのは敢えてだ。
(何かやる事があった方が、気が紛れるようですからね)
声に出さずに、胸中のみで、クリムは呟く。
実際、ルキナがあのようにそわそわとし始めたのは、いつもよりも随分と早めに始めた夕食の準備がほぼほぼ完了して、手持ち無沙汰になってからだったのをクリムは見ていたのだから。
案の定、動揺して何か失敗する、なんて様子は微塵もなく、ルキナは慣れた様子で手際よく、用意を整えていく。
ころんとした丸みを帯びた2つのティーカップ。細かい植物柄が描かれた少し大きめのティーポット。その注ぎ口からは、ゆらゆらと白い湯気が細く立ち上っていた。
ルキナの手が、ポットを持ち上げ、傾ける。
とぽぽぽ、と音を立てて、ポットからお茶が注がれ、ふわりと、ホッとする香りが周囲に広がった。
紅茶とハーブとマジ、飲みやすく調整したルキナ特製のプレンドティーだ。
「相変わらず、良い香りです」
「えへへ。ありがとうございます」
クリムの言葉に、ルキナは照れたように笑う。クリムはルキナへと、椅子に座るように促し、2人揃って腰を下ろす。
一気に物音が消え、ふうふうと、お茶に息を吹きかけ、冷ますルキナの吐息だけが、控えめに響いていた。
そっとカップを持ち上げ、品のある仕草で、クリムが先にお茶をひとくち飲む。
心落ち着く香りと、渋みや、ハーブ独特の癖が抑えられ、むしろほんのりと甘く飲みやすい味に、ほっと、クリムの口からも吐息が零れ落ちる。
視線を上げ、ルキナを見れば、ようやく飲める温度になったらしい。両手でカップを包み込むように持ち、ちみちみとお茶を飲んでいた。
ちょっとは落ち着いたけど、やっぱり心配です。
そう顔に書いてあるようだった。そんな、しゅんと眉の下がる表情に、つい、クリムは苦笑する。
「……心配、ですか?」
故に、努めて穏やかに問いかける。
ルキナは両手でカップを持ったまま、こくん、と大きく頷いた。
「もうすぐ帰ると、オーアから連絡があったでしょう?」
「でも、だって、レン、2日も、目、覚まさなかった、って……ホントに大丈夫か、心配だよ。オーアさんが大丈夫、って言ったの、ウソだと思ってる訳じゃないの。でも、でも……それって、2日も目、覚まさないような無茶、した、って事でしょう?」
「そうですね。その点に関しては、しっかり問い詰めて、叱っても良いと思いますよ」
まぁ、クリムからすれば、無茶という点に関して言えば、レンとルキナは50歩100歩だ。むしろルキナの方がタチが悪いと思っているので、100歩の方がルキナでしょうね、なんて考える。それはレンも同意見だろう。
ルキナには言われたくない、と逆に彼女が叱られる未来が見えた気がした。
けれど、そんな事はおくびにも出さず、クリムは優雅にお茶を飲む。
「……うん」
クリムの言葉に、ルキナは小さく頷き、ちびちびとお茶を口にする。
「……クリムさん。私……間違って、なかったよね?」
不意に、ぽつりとこぼれ落ちた言葉に、クリムは静かに顔を上げる。ルキナを見れば、向かい側に座る彼女の瞳は、泣きそうな程に不安で揺らめいていた。
「レンに言われたとおり、待ってて、良かったんだよね? 私、やっぱり、一緒に行ってたら、何か、出来たんじゃないか、って……」
言ってから、ルキナは、ふるふると頭を振る。
「うぅん。私が行っても、足手まといになっちゃう。だって、あの時っ、私が、私のせいでっ、私があそこで転んだりしたからレンがっっ!!!」
「っ、ルキナさん!」
トラウマとなった記憶がフラッシュバックしたらしい。
ルキナは頭を抱え、かぶりを振る。取り乱すルキナに、
クリムは慌てて立ち上がる。ルキナの元へ駆け寄ると、彼女を強く抱き締めた。
「落ち着いてください。大丈夫、大丈夫ですから」
クリムの白く細い手が、ルキナの背を撫で、ぽんぽんと、宥めるように、淡く叩く。
「レンは、戻ってきたでしょう? 今も、貴方と共にいるでしょう? 大丈夫ですよ。大丈夫。今回も、もうすぐ帰ると連絡があったでしょう? レンは貴方のそばに居ますし、私も居ます。大丈夫……」
クリムは根気強く、何度も何度も大丈夫を紡ぐ。
段々とルキナの呼吸が落ち着いてきたのを見計らい、クリムは努めて穏やかに問いかける。
「……落ち着きましたか?」
抱き締めていた状態から、軽く体を離し、そう声をかけると、ルキナはこくこくと頷いた。
「は、はい。……ごめんなさい、私……」
「お気になさらず。落ち着いたのなら、良かったです」
そう言って微笑み、クリムは最後にルキナの頭を撫でてから、ヒールを唱えた。
ルキナの体が温かな治癒の光に包まれ、泣いたために、ほんのり赤みを帯びていた目元が元の色合いに戻る。
「クリムさん……?」
きょとんと目を瞬かせ、桔梗色の髪を揺らして小首を傾げるルキナに、クリムは苦笑する。
「少々、赤くなっていましたので。泣いた後と分かる顔をレンに見せたくはないかと思ったのですが……」
余計なお世話でしたか? と問いかけるクリムに、あ、と声を上げ、ルキナはバッと目元を抑える。
「いるっ。いりますっっ! レンに心配かけたくないっ」
「ふふ、大丈夫ですよ。もう、綺麗に消えていますから」
くすくすと笑って言ってから、クリムは表情を整えてルキナを見る。
「……さて、ルキナさん。落ち着いたようなので少々言わせて頂きますね」
「はっ、はいっ」
ぴっと、肩を跳ね上げたルキナに、クリムは穏やかに、けれど懇々と言葉を紡ぐ。
「まず、たらればを考えるのは止めなさい。それが、次や別の事柄の対策に繋がるのであれば良いです。けれど、ただのもしもや後悔であるのなら、考えるだけ無駄です。それは、結果論でしかないのですから」
「う。……はぁい。善処します。」
しょも、とルキナは肩を落とす。そんな彼女に苦笑を零してから、クリムは口を開いた。
「それよりも、この選択で貴方が出来た事の方に目を向けなさい」
言われた言葉に、ルキナは目を丸くする。
「でも、私、今回は、何もっ」
ただ待っていただけで、何もしていない。
そう言って首を振るルキナに、クリムは苦笑を深める。
「貴方も、逆の立場の経験はあると思うのですけどねぇ……転生前、アカデミーのごたごたに巻き込まれた際、カルロさんとプレナさんを避難させたでしょう?」
クリムの言葉にこくりと頷く。
妹2人に用意した避難先は、今自分達が住んでいるこの家なのだから、忘れるわけがない。
そんなルキナに、クリムは微笑み、小首を傾げた。
「彼女達が安全な所に避難して、安心はしませんでしたか? これで、彼女達は大丈夫だと。目の前の困難に集中出来るようになりませんでしたか?」
その問いかけに、ルキナは目を見開く。
それは、覚えのある感情だった。
「なった。……これで、カルちゃんと、プレちゃんは、大丈夫、って。ほっとした。もし、私に何かあっても、カルちゃんとプレちゃんは大丈夫、って……」
あの時、そう、心底安堵した。
逆の立場、というのであれば……
「レンは、レンも、私がここにいる事で、安心できた?」
「えぇ、そう思いますよ。もし、あの時、カルロさんとプレナさんが避難せず、貴方と共に居たら……想像でしかありませんが、彼女達に助けられることも、きっとあったはずです。ですが、不安にも思うのではありませんか? いつ、彼女達が敵の手に落ち、別人のようになってしまったら、と。……まぁ、事実別人だったと聞きましたけど」
「うん。うん。そう、だね。ずっと心配だったと思う。嬉しいけど、でも、今からでもいいから、安全な所に行って欲しい、って……そっか、うん。私、何も出来てないけど……それでも、レンの安心に、なれてたなら……よかった」
ほっと行きを零し、ルキナは小さく笑みを浮かべる。
その時だった。
――チリン。
玄関の扉につけられた鐘が鳴る音がした。
つまり、それは、誰かが扉を開けたという事であり、それは――
「っ、レンっ!」
その音が聞こえた瞬間、ルキナはパッと立ち上がり、弾かれたように、玄関へと駆ける。
短い廊下を走り、見えたのは、若草色の髪に、ルキナと変わらない背丈、ハイマーチャンである事を示す色違いの商人服。それら全てが、帰ってきたのが、ルキナの待ち人であると示していた。
駆けてくるルキナに気付いたらしい。レンがルキナへと視線を向けた。
「ルキナ!」
呼ばれた声に、胸がぐっと締め付けられたかのような、安堵と心配と他の何かが混ざったような心地がした。
その勢いのまま、ルキナは飛びつくように、レンの手を取る。
「レンっ、レン! 大丈夫? 怪我とかしてない? なんともない?」
次々と言葉を連ねるルキナに、レンは穏やかに笑う。
「大丈夫。大きな怪我はなかったし、小さな怪我はもう治して貰ってる。遅くなってごめんね。ちょっかいかけられてる間、まともに寝られなかったのと、さすがに疲れて……ちゃんと休んでから帰る事になったから」
「うぅん、ちゃんと休むの、大事」
そう言ってから、ルキナはレンの傍らに立つ黄金色の髪の青年を見上げ、笑いかける。
「オーアさんも、ありがとうございます。レンを助けてくれて」
「気にすんな。ちゃんと正式な依頼だし」
「でも……オーアさん、もし依頼じゃなかったとしても、助けてくれたでしょ?」
「……それは、まぁ」
ルキナの確信に満ちた問いかけに、オーアは頬を掻く。そんな青年に、視線を向けることなく、レンはため息をつく。
「お人好し」
そんな言葉に、ルキナはにこにこと頷く。
「うん。オーアさん、良い人だよね」
「べっつに、褒めた訳じゃないんだけどなぁぁっ」
そんな2人のやりとりに、つい、オーアにも笑みが浮かんだ。
改めて、終わったのだと、しみじみ感じた。
「あっ! オーアさん、もし良かったら、お夕飯いっしょにどうですか? あと仕上げって所までは出来てるので、すぐ出来ますよっ」
「ホント? じゃあ、お言葉、甘えされてもらおうかな。色々話したい事もあるし」
パッと笑うオーアに、レンは思わず舌打ちする。
その反応に、ルキナは訝しげに小首を傾げた。
「……レン、やっぱり無茶した?」
「そこの人に比べたら、全然してないよ」
軽く肩を竦め、しれっとレンはのたまう。そこに響いたのは、クリムの声だった。
「つまり、どっちもどっち、という事ですね」
ルキナよりも送れて、ゆるりと姿を現した白銀の髪の少年は、ルキナへと笑いかける。
「あとは、私が案内しますから、準備をしに行ってきても大丈夫ですよ」
その言葉に、ルキナは嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます。じゃあ、お願いします」
そう言って、家の奥へと駆けていこうとしたルキナだったが、ふと、数歩進んだところで、不意に立ち止まる。
くるりと身を翻し、ぱたぱたとレンの元へと戻ってくる。
そうして、レンの間の前に立ち、深い蒼の瞳を細め、ふんわりと、嬉しそうに、蕩けるように、笑った。
「おかえりなさい。レン」
その言葉に。
本人は無自覚だろうが、レンの居場所はここだと示す言葉に、一瞬、レンの瞳が丸くなる。
そして、幸せそうに、頬が綻んだ。
一度は赤に戻した瞳が、じわりと、紫へ色を変える。
「うん。ただいま。ルキナ」
fin
あとがき
お、わ、っ、たぁーーっ!!
長かった……けどっ、色々満足ではあります。
瞳の色が変わったのを見たルキナちゃんの反応まで書こうかとも思ったんだけど、元から決めてた通り、ラストは「ただいま」で〆たかったので、ここで切り。
とりあえず、この後は、夕飯時に諸々聞いたクリムが、とりあえず、おやつを食べるようにしましょうか。量が食べられないなら回数を増やして補食出来るようにしましょう、ってため息付きながら言ってくれたりするかなー。
まぁ、そんな訳で、ようやくここで、レンの気質切り替えが解放されて、人寄りにも魔寄りにもなれるように。人寄りの時はちゃんと、魔力回復するようになるけど、咄嗟に夢魔の力は使えなくなるので、基本、夢魔寄りのままで、ルキナ・クリム・オーアの3人の前でだけ(他に人がいない時のみ)人寄りになってそうw
以下徒然と。
ビョンウンゴ戦後のリーベとエドアルトさんの会話も、初期から、ほぼ決まっていて、書きたかったシーンでした。ようやく書けてほくほくだったんだけど、いざ、そのシーンに到達したら、書きながら
これ、実はエドアルトさんは、オーアと一緒に宿に戻ってて、助太刀に来たエドアルトさんは偽物。で、この2人きりになったタイミングで、リーベさんが「……で、貴方誰なの?」って切り出すのも、面白そうだなー、なんて思ったりしてた。「私、オーアちゃんとか、柚ちゃんみたく、そんなに感覚鋭い訳じゃないんだけどね? ――それでも、その人が、本当に好きな人かどうかくらい、分かるわ」って。ただ、そのルートやると、やりたかった会話と裏話が丸っと全て潰れる上に、リーベさんこのまま行方不明で、次の事件に続く!って締めになるので、却下です。えぇ、却下ですとも……もう、丸く収めたい。
……けどまぁ、オーアが無茶しないルートだったら……あぁ、ダメか。そうするとエドアルトさん、宿に一緒来ない……やっぱ無理か。……でも、上のリーベさんのセリフが吐ける事件は、どっかでやってみたい……私が見たい、そのシーン。
ベース・ジョブMAXで転職させる、っていうのは、ゲーム内の私のこだわりで、オーアもそうしたんだけど、オーアなら、転職条件満たしたらさっさと転職したがりそうだなぁ、っても思っていて……っていう事は、ベースMAXになるまで、オーア自身が転職条件を満たしていることに気付いてない必要があるんだよなー、ってぽやぽやしてたら、リーベさんが共犯者に立候補してくれて戦乙女の雫貸与の小ネタが発生したっていう裏話。ジョブが先にMAXになったのも実話ネタです(笑)
オーアとヴァレリーさんの会話は、なんか、勝手にああなった。割とここも勝手に生えたシーンだったりする(ぇ
おかげさまで、ぽろぽろと別口のネタが発掘された。ありがたや。
お店見つけた経緯も、オーア話そうとしてたんだけど、さすがに話が転がりすぎるな、と判断したので、中の人ストップがかかったという裏話。あと、これは、別件として、小話にするべきだな、って思ったのもある! ヴァレオー、リベンジ出来たらいいな(フラグでは……?
もし、レンがルキナと再会せず、今回のポートマラヤ編に入っていたら、そーとー難易度はガン上がりしてました。
作中通り、オーアとはルキナ繋がりで知り合っているので。で、今回のPTメンバーALLオーア繋がりなので。
オーアと縁結べてなかったら、今回のメンバーALLキャンセルになっちゃうんですよねー……
ただ、代わりに、ポートマラヤから脱出してきたばかりだったレンを保護してくれた超放任保護者な双子が代わりにパーティIN、ついでに双子繋がりで、チャンプ……いや、修羅になってそうだな、この時期だと。まぁ、そんな方が巻き込まれてくれたと思われる。
が、双子も修羅さんも、退魔組+柚葉のような専門知識無しなので、病院クエショートカットなし&レンが夢魔に攫われたら、その時点で詰むというハードモード。……まぁ、夢魔に攫われたら、ぶっちゃけ、オーア以外は詰むんだけどネ。
作中にもあったけど、夢魔戦となった場所は、オーアだからこそ判定無しで見つけられる奴なので……他の人だと、クリティカル判定求められる奴だから、下手すると1クリ必要な奴だから(※システムが違います
ただ、実はこっちのルートでも、オーアのみなら参加の目はあるのです。
レンは知らないけど、この修羅さん、オーア・ルキナ・クリムとは知り合いなんよね。実は、ブログに書きかけ放置なアルベルト失踪事件で一緒に脱出したハイアコさんなのです。この人。ついでに、あの時、遺言託そうとしてた相手が双子っていう裏話。そっちも書いてみたいんだけど、そっちまで手が回らん……遅筆ぅ……orz
まぁ、だから、もし、こっちのルートだったら、修羅さんからオーアに話がいって、ここでレンとはじめましてになっていたかもしれない。
ぶっちゃけ、この話、オーアにいて欲しい奴だしね!!
ただ、まぁ、リーベ・柚葉・エドアルトさんのがLv高いので、どっちにしろ、IFルートの方が難易度高いことは変わらないんだよねぇ。
なので、再会ルートにもってったルキナちゃんは、実はGJだったりするのです。
実はルキちゃん、転生前に不定の狂気入るくらいにはSAN値削れてるんだよねぇ(※システムが違います)。転生1次辺りはその辺りの療養期間の側面もあったりする。あったりするが、何事もないとは言ってないけど()
まぁ、この後に、リーヴァ読むと、ちょっとは納得度合い上がるんじゃないかなー、と思ったり。
次、何書こうかなぁ。中途半端になってるのは、いくらでもあるのだけど……
でも、ヴァレオーリベンジと、今回で発掘したネタの種は育てたさがある。
使用素材: Atelier Little Eden様 Telescope[South]